【番外編】初恋が君に届くまで

シャワーを浴びてから寝室に行くと、つむぎはスヤスヤとよく眠っていた。

(はあー、可愛い)

あどけない寝顔のつむぎに、丈は目を細めて笑みを浮かべる。

この幸せをなんと表現すればいいのだろう。
仕事の疲れは一瞬で吹き飛び、これから眠るというのに一睡もせずにつむぎを見つめていたくなった。

ベッドに潜り込むと、両手を伸ばして優しくつむぎを胸に抱きしめる。

(たまらん、幸せすぎる)

頬を緩めながら、形のいいつむぎの額にチュッとキスを落とす。

すると腕の中でつむぎが「ん……」と身じろぎし、丈の胸に柔らかいその頬をすり寄せて呟いた。

「……丈くん」

ドキーンッ、と丈の心臓が跳ねる。

(な、な、なんだって?)

空耳だろうか。
これまでつむぎに名前で呼ばれたことなど一度もない。

だが確かに今の可愛らしい声はつむぎのもの。

(つむぎが、つむぎが、俺の、名前を?)

年甲斐もなく真っ赤になり、片手で口元を覆う。

(確かめたい。つむぎ、今なんて? って。いや、いかん。こんな真夜中に起こす訳には……けど、でも……)

丈は腕につむぎを抱いたまま、悶々と夜を明かした。