【番外編】初恋が君に届くまで

「……ただいま」

深夜2時半。
帰宅した丈は静かに玄関を開けた。

奥のリビングはほのかなスタンドライトがぼんやりと灯っているだけで、静まり返っている。

(つむぎ、ちゃんと寝たな。えらいえらい)

結婚後、どんなに遅くても自分の帰りを起きて待っているつむぎに、丈は何度も「先に寝てな」と言ってきた。

つむぎは「はい」と頷くものの、丈が玄関を開けると寝室から「おかえりなさい」と出て来る。

おかげで丈は、無音で玄関を開ける技を習得した。

(なるべく早く帰りたいけど、深夜に行うのが決まりのシステムメンテナンスの日だけは無理だな)

ダイニングに行くと、テーブルの上にラップをかけた器と、つむぎの字で【おかえりなさい。鮭の卵とじ雑炊です。よかったらレンジで温めて食べてね】と書かれたメモが置いてあった。

(おお、うまそう)

横には粒あられや昆布、梅肉なども添えられている。
見ているだけでお腹が空いてきた。

手を洗うとレンジで温め、早速「いただきます」と手を合わせる。

(うまいな。ホッとする)

お腹は美味しい雑炊で、心はつむぎの優しさで、ポカポカと満たされた。