「……あまね、みしお?」
ファインダーからようやく顔を離した僕は、自分の声が少し上気していることに気づいて、わざとらしく咳払いをひとつした。
カメラを机に置き、不自然に衣服の皺を伸ばす。
「そう、天音美汐。東京から、この街に引っ越してきたの。よろしくね、月丘駆くん」
「え、なんで俺の名前――」
「さっき職員室で担任の先生に聞いたの。『天文部には、いかにも不愛想だけど星に詳しい月丘って生徒がいるぞ』って」
美汐はいたずらが成功した子供みたいに、形の良い眉をきゅっと下げて笑った。
不愛想、という言葉に晴真が横でぶっと吹き出す。
「なんだよカケル、先生公認の不愛想かよ! あ、俺は篠崎晴真! ここの部長な! よろしく、天音さん!」
「うん、よろしくね、晴真くん」
晴真のいつもの大声にも怯むことなく、美汐は丁寧に頭を下げた。
彼女の首元で、セーラー服のスカーフが潮風に小さく踊る。
そのあまりの白さに、僕は眩暈に似た感覚を覚えた。
東京の洗練された空気をそのまま切り取ってきたような彼女の存在は、この煤けた部室の中で、あまりにも異質で、あまりにも鮮烈だった。

