「あの……、ごめんなさい。ここって、天文部の部室で合ってますか?」
ファインダーの四角い枠の中に、突然、鮮烈な「白」が飛び込んできた。
東京の、洗練された私立高校のものとおぼしき、綺麗な仕立てのセーラー服。
肩のあたりで柔らかく弾むように揺れる、艶やかな黒髪。
そして、ファインダーのレンズ越しに僕と視線がぶつかった、夜空のように深くて、意志の強い、大きな瞳。
僕は思わず、カメラを構えたまま硬直した。
「うわっ!? ほ、本当に降ってきた……!?」
晴真がスパナを床に落とし、間抜けな声を上げる。
少女は、僕が構えるカメラのレンズを臆することなくじっと見つめ、それから、僕たちの様子がおかしかったのか、ふふっ、と鈴を転がすような声で笑った。
彼女が笑った瞬間、部室の中にたまっていた熱くて淀んだ空気が、一瞬で爽やかな秋の風に書き換えられたような錯覚に陥る。
彼女は一歩、部室の畳を踏みしめた。
窓からの西日が、彼女の白いソックスと、ローファーの先を黄金色に包み込んでいく。
「はじめまして。転校生の天音美汐です。――ねえ、そこのカメラの君。この街で一番、星が綺麗に見える場所を、私に教えてくれない?」
逆光の中で微笑む彼女の姿は、まるで最初からそこに描かれていた絵画のように完璧で。
僕の胸の奥で、カチリ、と、ずっと止まっていたはずの青い秒針が、にわかに動き出す音が聞こえた。

