『君のいない秒針を、僕らは止める』



世界はいつも、僕を置いてきぼりにする。


突き抜けるように高くて、残酷なほどに均一な夏の青空。


アスファルトの隙間から陽炎を立ち上らせる、ジリジリとした暴力的な熱。


坂道を下りきった先で、太陽の光をバラバラに反射してぎらついている、巨大な重油のような鈍い海。


それらはすべて、僕の人生には何の関係もない、ただの退屈な背景だと思っていた。


僕の名前は、月丘駆(ツキオカ カケル)。


この、過疎化と高齢化がじわじわと進行している寂れた港町・潮見町で生まれ育ち、特にやりたいことも、目指すべき未来もないまま、なんとなく十七回目の夏を迎えてしまった高校二年生だ。


僕の毎日は、進みの遅い時計の針をただ眺めるだけのような時間だった。


誰も僕に期待していないし、僕も世界に何も期待していない。


あの日――彼女が僕の前に現れて、その細い指先で、僕の止まっていた秒針を狂わせるまでは。