「莉久……!」
「なに」
「なに、じゃないよ……!」
振り向いた莉久は、少しだけ楽しそうだった。
でも、その目はひどくやさしい。
「だって白石しかいなかった」
「みんな見てたのに……」
「見てたから?」
そのひと言に、いちかは詰まる。
「見てたから、ちゃんと分からせたかった」
「え……」
莉久が一歩近づく。
テントの影で、外のにぎやかな声が少し遠くなる。
「白石が俺にとって特別ってこと」
その言葉だけで、胸がいっぱいになった。
「でも、恥ずかしかった……」
正直に言うと、莉久は少しだけ笑って、いちかの赤いハチマキの端をそっと整える。
「ごめん。でも後悔はしてない」
「してないの?」
「全然」
即答されて、いちかはますます顔が熱くなる。
「むしろ足りない」
「まだ足りないの?」
「うん。ほんとは大好きな人って書いてあっても迷わなかった」
「っ……!」
さらっと言われてしまって、いちかはもう声も出ない。
そんな反応を見て、莉久は満足そうに目を細めた。
「今日ずっと、他のやつらが白石のこと見てるの気づいてたし」
「え?」
「だから先に取った」
独占欲まじりのその言い方に、胸がどきんと跳ねる。
みんなの前で選ばれた理由が、そんなふうに甘いなんてずるい。
いちかが何も言えずにいると、莉久は少しかがんで、いちかにだけ聞こえる声で言った。
「今日は一日、ちゃんと俺だけ見て」
「……もう十分見てるよ」
そう返すと、莉久は一瞬目を見開いて、すぐにやわらかく笑った。
「それ、うれしい」
そのまま、誰にも見えないように、莉久の指がそっといちかの指先をくすぐる。
一瞬だけ触れる、秘密の合図みたいな甘さだった。
午後の競技が始まってからも、いちかの胸はずっと落ち着かなかった。
だって校庭の真ん中で、あんなふうに選ばれてしまったから。
けれど恥ずかしさ以上に、うれしさのほうがずっと大きい。
みんなの前でも変わらずまっすぐで、独占したい気持ちを隠さない莉久が、どうしようもなく愛しかった。
体育祭の空は高く晴れていた。
歓声の中で交わした視線も、借り物競走でつないだ手も、
きっと今日のことは、ずっと忘れられない。
それはまるで、恋の予報がみんなの前で当たったみたいな、
とびきり甘くてまぶしい一日だった。
「なに」
「なに、じゃないよ……!」
振り向いた莉久は、少しだけ楽しそうだった。
でも、その目はひどくやさしい。
「だって白石しかいなかった」
「みんな見てたのに……」
「見てたから?」
そのひと言に、いちかは詰まる。
「見てたから、ちゃんと分からせたかった」
「え……」
莉久が一歩近づく。
テントの影で、外のにぎやかな声が少し遠くなる。
「白石が俺にとって特別ってこと」
その言葉だけで、胸がいっぱいになった。
「でも、恥ずかしかった……」
正直に言うと、莉久は少しだけ笑って、いちかの赤いハチマキの端をそっと整える。
「ごめん。でも後悔はしてない」
「してないの?」
「全然」
即答されて、いちかはますます顔が熱くなる。
「むしろ足りない」
「まだ足りないの?」
「うん。ほんとは大好きな人って書いてあっても迷わなかった」
「っ……!」
さらっと言われてしまって、いちかはもう声も出ない。
そんな反応を見て、莉久は満足そうに目を細めた。
「今日ずっと、他のやつらが白石のこと見てるの気づいてたし」
「え?」
「だから先に取った」
独占欲まじりのその言い方に、胸がどきんと跳ねる。
みんなの前で選ばれた理由が、そんなふうに甘いなんてずるい。
いちかが何も言えずにいると、莉久は少しかがんで、いちかにだけ聞こえる声で言った。
「今日は一日、ちゃんと俺だけ見て」
「……もう十分見てるよ」
そう返すと、莉久は一瞬目を見開いて、すぐにやわらかく笑った。
「それ、うれしい」
そのまま、誰にも見えないように、莉久の指がそっといちかの指先をくすぐる。
一瞬だけ触れる、秘密の合図みたいな甘さだった。
午後の競技が始まってからも、いちかの胸はずっと落ち着かなかった。
だって校庭の真ん中で、あんなふうに選ばれてしまったから。
けれど恥ずかしさ以上に、うれしさのほうがずっと大きい。
みんなの前でも変わらずまっすぐで、独占したい気持ちを隠さない莉久が、どうしようもなく愛しかった。
体育祭の空は高く晴れていた。
歓声の中で交わした視線も、借り物競走でつないだ手も、
きっと今日のことは、ずっと忘れられない。
それはまるで、恋の予報がみんなの前で当たったみたいな、
とびきり甘くてまぶしい一日だった。



