もう戻れない




私の父親を殺した犯人は、本当に秀くんなんだろうか。


父親である会長を信頼して慕っていた秀くんが殺すはずがない。きっと嵌められたんだ。



遺影の前で涙も流さず、呆然と見つめる秀くんの弟、晃輝。私にとって秀くんと同じくらい大事な存在で、お兄さんを亡くした晃輝の背中が一回り小さくなったように見えて、寂しさを吸い取ってあげたくなった。




「晃輝…」


晃「探す」




ぽつりと呟いた晃輝。真犯人を探すということだと、すぐに理解した。




「私も一緒に探す。お父さんを殺した人、絶対秀くんじゃないと思う」




晃輝も私も同じ気持ち。秀くんじゃない、本当の犯人を見つけたい。


悲しみがないわけじゃない。真実を知らないとまだ泣けないだけ。



〝お兄さん、暴走族らしいよ。弟さんも同じなんじゃない?〟とか〝彼女がいるらしいけど、ろくな人じゃないわ〟とか、隠れて話しているつもりなのかもしれないけど、本人がいる前だし一言一句耳に入ってくるし。

そういう噂みたいな、個人を攻撃するような批判は無視して、晃輝の背中に手を置いた。




晃「ありがとう、沙和さん」




こうして、私と晃輝二人の真犯人探しが始まった。



とは言っても、どこから手をつけて良いかも分からない。探偵に調査を依頼するのもお金がかかるし、できるだけ自分で見つけたい。




「事務所に行くのは、どうかな?」




父親が殺された場所に行くのは、少しだけ足がすくむ。でもあそこに行かないと見えてこないこともあると思った。


でも残念ながら、中には入れなくなっていた。影宝会の事務所は、警察が現場保存をしたあと立入禁止になってしまい、影宝会のみんなも誰もいない。




晃「…別荘にいるかも」


「別荘?」




晃輝の言う別荘、初めて聞いた。父親がいつの間に建てたのか、その別荘に晃輝の車に乗せてもらい、向かう。

一度入ったら戻れなさそうな深い森に入り、いくつもの獣道を抜けた先に突然現れた、一戸建て三軒分ほどの立派な別荘。




「こんな家、いつの間に建ててたの」


晃「沙和さんに遺すんだって、秀から聞いたことあるよ」


「そんなこと言ってたの?」