もう戻れない





貴裕と澤村さんに話を聞きたくて、二人が別荘にいる時に連絡が欲しいと法戸くんに伝えた。


なのに既読もつかず、ようやく連絡が来たと思ったら、週末にさしかかった頃。




法「本当にすみませんでした…」


「既読もつかないなんて、心配するでしょ!?」


法「電波の届かないところにいたもので」


「本当なのか嘘なのか知らないけど…、無事なら良いから」


法「はい…」




私がただ酷い説教をしている人みたいになってしまっているけど、法戸くんたちを心配して怒っていることだけは分かってほしい。




「ごめん…、言い過ぎた」


法「いえ、本当のことですから。連絡が取れなくなること、沙和さんには言っておくべきでした」


「で、二人はいつなら別荘にいるの?」




返事は、来週の日曜日。日曜日なら晃輝もいる。残念ながら法戸くんは二週間ほど連絡がつかなくなるようで、しばらくは家で大人しくして、晃輝が休みの日だけ行動することに。




法「僕がいない間は守れないので、慎重に。周りに人はいますけど、あまり信じすぎない方が良いかもしれません」


「そんなに警戒する必要ある?」


法「嘘を見破られないように、訓練してきた人たちですよ。沙和さんと晃輝さんを一気に消してしまえる方法なんて、数えきれないほど知ってるんです」


「そんなに脅さなくても…。でも、気をつけます」


法「お願いします」




あそこまで言われると、さすがに無防備に出歩こうなんて幼稚な考えは捨てる。すぐに晃輝への通話ボタンを押した。

晃輝は私が一人で犯人探しを進めていたと知ったら、怒るだろうか。どう言われるかを考えて四コール目を数えた時、晃輝の眠たそうな呑気な声が聞こえた。




「ごめん、寝てた?」



今の時間は夜の十時。まだ寝てないと思っていた。



晃「ううん。寝落ちしてただけ。起こしてくれて、ありがとう」




電話越しに唸っている低い声が聞こえてきて、秀くんもよく寝落ちしたり、朝が弱くてモーニングコールをしていたのを思い出す。


秀くんも起こす度に電話越しに低い唸り声を上げて、伸びしてるんだなと想像して笑っていた。兄弟、本当にそっくり。




「おはよう」


晃「うん…。おはよ」




絶対にまだ頭が起きていないような返事まで、一緒。途端に秀くんが懐かしくなった。




「晃輝、秀くんにそっくり」


晃「ん…、そう?似てる?」


「うん、懐かしくなる。秀くんと話してるみたい」


晃「…寂しい?」


「ううん、そういうんじゃない。嬉しいだけ」




寂しいというよりは、罪を被せられて死んでいった秀くんの悔しさを受け継いでいる感覚。耳に当てた携帯から聞こえる、優しく包まれるような安心感のある重低音の声。目を閉じて聞くと、本当に秀くんと話しているみたい。