ソ・レイジェラの大聖女――。人々を導く存在でも、この世界に生まれた時には、ほかの者たちと同じように家族がいたのを思い出す。
地上の緑に包まれた領地で、小さな手を伸ばして両親の手を握り、そっと愛おしそうに抱き上げてくれたのが、とても嬉しかった。
父と母が大好きで、同じように愛してもらえて――。
「と、言っても軽く百年以上昔なことなのは、間違いないが……」
小さく息をついた。
今となっては、もう生まれたあの屋敷に、父も母も生きてはいない。幼い頃にアレッシェラがゆりかごを覗き込んで、指を掴んであやした妹も、とうに冷たい石の下で眠ってしまっている。
そこを訪れても、今触れることができるのは、石に刻まれた墓碑銘だけだ。
「――だから、せめて夢の中の相手に出会うことができたら、またあんなふうにすごせるのではないかと思ったのだが……」
ふと、夢に出てくる顔もはっきりとわからない相手を思い出した。
幼い頃から繰り返し見た夢。大聖女ではなく、ただのアレッシェラの頃から、好きだと言ってくれたのは、今ではもうあの夢の人ぐらいだ。
以前、女神フロールに夢の人のことを尋ねた時の言葉を思い出す。
