青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

『編集作業に入るから。形になったら共有するし、意見聞かせて』

了解、のスタンプを送信して由紀は溜息を零す。

「絶対、言葉足らずはそっちやん……」

ボケてるというのは悟や奈那にも言われるのでそうかもしれない。
しかし言葉足らずというのは訊き捨てならない。
絶対に夏希の方が言葉足らずなのだから。

講義前、スタンプに既読が付いたスマホ画面を構内のベンチに座って眺めていると、不意に後ろから聞き慣れた声がした。

「なんか二人、別れたって聞いたけど」

背後から忍び寄ってきたのは悟だった。
呼びかけもせず、いきなり本題から入ってくるのが彼らしい。

「誰が?」
「夏希と由紀ちゃん」

「だからまず付き合っとらんって」

振り返り眉を顰めると、悟は勝手に隣に座ってきてコンビニの袋を開きながら言う。

「最近二人でおるとこ見かけんから凄いで、女子の勢いが。夏希は鬱陶しがっとったけど」

またまた有難迷惑な情報だ。

どうやら悟は由紀の知らないところで、夏希と連絡先交換に成功したらしく、見かけたら声を掛ける程度の間柄にはなっていたらしい。

「夏希って俺に塩対応なんやけど。どうやったら仲良くなれるんやろか」

「知らんよぉ。むしろ教えて欲しい」

”もうこれ以上は上限突破できません”と言わんばかりに関係がストップしてしまった由紀達に比べれば、悟と夏希の友情なんて未知数だ。羨ましいことこの上ない。

とはいえ悟と違って由紀の場合、友達以上になりたいのだけれど。

――あぁ、こんなことなら好きだと確信したくなかった。

そうすれば今頃、呑気に『編集手伝おっか?』なんて気軽に尋ねていただろうに。
やきもきした感情のまま数週間経って、たまに悟から「今度は”あの●●ちゃん”が夏希に告白したらしい」と情報が入る。

相手の名前にモザイクをかけて忘れることにしているが、夏希の姿を見かけると進路を変更してしまう程度には気が滅入っていた。

もともと白黒はっきりつけたいほうで、嫌なことは嫌だと言える。
しかし夏希に関しては下手な真似をして嫌われたくなかった。

これがまさに恋なのだ。

宇宙戦争のダークヒーローよりも、寡黙なボウガン男よりも、海部を守るマッチョよりも、ずっとずっとドキドキする。画面の奥で見つけた理想の男には一方通行で良かったのに、現実の夏希にはこの想いに共感して欲しいと願ってしまう。

仕方ない。ここは耐え時だ。

なにせ無策のまま行動するのはよくないとサバイバル映画で学び、ロマンス映画ですれ違いはタイミングの悪さだと理解している。

それに相手が夏希の場合、何もしないことが策。きっとそうに違いない。