星空玲&如月みぞれコラボ短編第一巻「お忍びダブルデート」『ファインダー越しのシンデレラ』&『ソロ・デュエット』

私達がワイワイ話していると、近くから男女の声が聞こえてきた。

「あ、リア!って、今日の服めっちゃ似合ってて可愛いよ」

「レオンこそ!いつもとは違う服でもかっこいいよ!」

お互いを褒めあってるみたい。

もしかして、この出会いこそ、デートのきっかけを聞く運命のカップル……!

謎の思考が頭を巡る。

あちらもデート中みたいだなっ。

甘い雰囲気がこっちにも漂ってきて、ただモノじゃない感じがすごい……っ!

「悠陽、ねえ」

「どうした、美夜」

「あの子達も、カップル?恋人?かなぁ。同い年っぽい感じがするね。ビジュアルが、強いっ……!」

「確かにそうだな。で、それが何。別に関係ないだろ」

「ゆ、悠陽っ……!それはカップルさんに失礼だよ」

今のは、いくらなんでも良くないと思う。

悪気があって言ったわけじゃないって、信じてるよ。

「ごめん」

すぐ謝った悠陽。

本当に申し訳なさそうな顔をしてる……。

そんな顔されたら、許すしかなくなる……って、私ほぼほぼ悠陽とセリフが同じすぎる!!

「ううん、良いよ。私達は私達でデート楽しんだ方がいいし、他のカップルの話しちゃって、私の方こそ、ごめんね」

「美夜……。美夜があの二人と友達になりたいなら、良いよ。俺も、あのカップルと友達になる!」

友達宣言!!

「じゃあ、行ってみよ」

私達は、どーしてもあの二人のオーラや甘々さが気になってしまうため、友達になってみることに!

でも、こんな感じで言ってみると。

貴方達の華やかなオーラや甘々度に興味を持ったため、お友達としてお付き合いをさせていただけませんか。

これは、もう不審者だ。気味悪がられる。

この言い方は、初対面でも、不審だな。

やめておこう。


私と悠陽はその二人の側に近づいた。

いつものように、女の子に普通に話しかける。

「えっと、あの……。お邪魔してしまったら、すみません……」

全然いつもじゃない話しかけ方をしてしまった私は、後になり後悔した。

でもその女の子は優しく、

「ん?あ、全然大丈夫ですよ!」

と返してくれた。

天使……?

「私達は。ちょっと、言いにくいんですがっ、初デートの目的でここに来ておりましてっぇ」

うわ、最悪。

噛んじゃった……!

それでも女の子は笑顔で私の次の言葉を待っていてくれる。

「こんなことを聞くのはとても不謹慎だと思うのですが、お二人も。で、デートでっ?」

「そうですっ!」

そうなんだ……!あの雰囲気、あの姿勢。

プロのカップルだっ。

私が浮き立っていると、女の子がおずおずと言った。

私は慌てて緩み切っていた頬をピンと伸ばし、向き直った。

「あの〜。いきなり言うのもアレなんですが、私はモデルのリアと申しますっ」

リアって名前なんだ!

可愛いから、ピッタリだな。

「で、隣にいるのが、同じモデル事務所のレオンでーす!」

そうなんだ。

……ん?もでる?なんだろ、それは。

「えっと、もでるって何ですか?」

女の子はちょっとびっくりしたみたい。

しかし、私は本当に!もでるを知らないので、解説してもらった。

「えっと、モデルっていうのは服や雑誌、広告とかで商品の魅力を最大限に伝えるために、写真やショーで宣伝する仕事です!」

へぇ〜。

私は納得した。

自身の身体をいかして魅力を伝える仕事なんだ〜。

「解説ありがとうございます、女の子さん」

はっ。

私、また失態を犯してしまった。

元々、人見知りだから、こういうのには慣れてないけど、無性に、この子と男の子と話してみたくて。

この子の名前は女の子などという名前ではない。

ちゃんとした名前があるのに、私は……。

「すみませんすみませんすみません!!えと、おな、名前は、リ……アさんですよねっ?自己紹介で聞きました」

「そんなに謝らなくても良いですよっ!そうです、リアです!ちなみに苗字は桃井です」

「ありがとうございます……」

私はまたぺこっとお辞儀をした。

「……それで、貴方のお名前は……?」

わ、私の名前……を聞いてくれたっ……!

私、受け身体制になりすぎちゃってるから、少しは存在感を出さないと。

「私の名前、ですか……。宵闇(よいやみ)美夜(みや)と申します」

「ついでに俺の名前も。俺は、日向(ひゅうが)悠陽(ゆうひ)


わっ……。

悠陽が出てきた!

やっぱり好きな人が目の前に出ると、ドキドキしすぎて心臓が飛び出そうになる。

次に、リアちゃんの彼氏さんが自己紹介を始めた。

「それじゃあ俺も。俺は高橋レオン」

レオンって名前……っ!

クールな男の子って感じがする。


私は勇気を出して、言ってみた。

「ひけらかすようで変なんですけれど、実は私達……」

「私は、シンガーソングライターの『Miya』で、私の彼の、悠陽は、ダンサーの『Yuhi』なんです。2人のユニット『ソロ・デュエット』を組んで活動しています。顔出しNGにしてるので、多分関係者や家族以外知らないと思うんですけれど」

私の誇りの職業だから、自然と肩の力が抜けて話しやすくなる。

やっぱり恥ずかしいけど……、リアちゃんとレオンくんは、嫌味を言うような卑劣な人間じゃないって、分かってるから。


「知ってますっ!ソロ・デュエットさんですよねっ!私が期末テストの前に聴いていましたっ」

えっ、そうなの!?

すごい嬉しい……!

忙しい期末テストの時なのに、ソロ・デュエットの曲をわざわざ聴いてくれるなんて、感謝しかありません!


「良かったな、美夜」

悠陽もあたたかい笑みをくれた。



「そういえばですけど、今、俺たちはダブルデートしてるんですか」

レオンくんが鋭い口調で言う。

ちょっと怒ってるかな……!

おしゃべり好きじゃない私が、ここまでおしゃべりを楽しんだのは悠陽と以外無かったかも。

でもでもっ、怒らせちゃったよね、絶対。

こういうとき、どうしたらいいのっ!?

リアちゃんと私はどうしていいか分からずオドオドしてしまう。


「おい」

え、この低い声、誰の。


振り向くと、まさかの、悠陽ぃぃぃ!?

悠陽ってこんなドスの利いた声出す人だったっけ……。


「あ?なんだよ」

レオンくんも怒ってる。

こ、この状況、かなーり大変だっ。


「美夜が怖がってるじゃねぇか。相手の彼女に気配りもできないなんて、お前、彼氏失格だな」

ゆ、悠陽っ。

もっとレオンくんを怒らせちゃうよ……!

別の言い方ない!?

しかも、私、怖がってないよ!?

私の叫びは届かず、虚しく散っていった。


「お前が最初に俺に話しかけたんだろーが。リアも怖がってんだろ。お前の方が彼氏失格なんですけど」

「へぇ。そのリアって人は怖がってないだろ」

そうだけど、私も怖がってないよ、悠陽……っ!

「リアのことを人って言うな」

「はいはい。リアって人間。人物でもいーよ」

「はぁ!?それなら美夜ってやつも人物でいーさ」

「美夜は女神なんだ。人間じゃない」

「この世で一番可愛くて優しいやつはリアしかいねーよ」

「あっそ。じゃそれ以外は?この世ってどこからどこまで?」

「地球から宇宙までに決まってんだろ。当たり前な質問すんな」

「ふーん。そ。……お前の方が非常識だな。宇宙より大きい世界があるかもしれないのに、それすらも想像できないだなんて」

「そんなのどーでも良いだろ。そんなこと言う方が非常識だろ」

「じゃ、俺が非常識っていうのは認めとく。常識ばかりに目を取られててかわいそ」





「……ふ、二人とも……!

そろそろ、終わりにしようねぇ……!」

私はそろそろ歯止めをかけなければいけないと思って割り込んだ。

「今、何時だと思ってる?

夜の12時でーす」

リアちゃんも我慢の限界らしく、もう遅い時間を告げている。


四人の間に沈黙が流れる。

気まずい……っ、けど、こうするしかない!


「「……ごめん」」

悠陽とレオンくんの声が重なる。

良かった、二人とも通常に戻ってて。


「こ、こんな風に別れの時間が来ちゃったけど。また、会えると良いねっ……!!」

「次はどこで待ち合わせする?」

リアちゃんが言う。

「まだ決められないから、また今度決めることにしよう」

悠陽も。

「連絡先交換しよう」

レオンくんまで。


帰りに、4人で連絡先を交換し合った。

4人だけのグループチャットも作っちゃった!


お互いの姿が見えなくなるまで手を振り、大きな声で、



「また会おうね!」



と言った。


最高の夜だった。