わたしは吸血鬼なカレの番



「あ、はい! 最初は……本当にすごく怖かったんですけど。急に手首掴まれて連れ去られたり、血を吸われたりして……」

「はは、だよねぇ。あの王様っぷりだもん」

「でも……今は、すごくお世話になっていて。不器用だけど、本当はすごく優しい人だって分かったので……」



照れくさそうに頭を掻きながら笑うと、侑季先輩はホチキスを留める手を止めた。

そして、窓の外の夕焼け空を見つめるように、どこか遠い目をして優しく微笑んだ。



「そっか。……実はね、ヴァルがこんなに誰かのために表情を変えたり、感情を剥き出しにしたりするの、あかりちゃんが初めてなんだよ」

「え……私が、ですか?」

「うん」



侑季先輩は静かに頷いた。



「ヴァル、子供の頃からずっと一人で『完璧な神城の王』であることを求められてきたからさ。他人に頼ることも、甘えることも知らなかった。誰に対しても冷酷で完璧な吸血鬼を演じてたんだ」

「……ヴァル先輩……」

「でも、あかりちゃんと出会ってからはさ。怒ったり、意地張ったり、照れたり……すごく変わったんだよ」


幼馴染の俺には全然表情変えてくれなかったのにね!とちょっと不満げに口をとがらせて笑う侑季先輩。

侑季先輩の言葉が、私の胸の奥に深く深く染み込んでいく。

ヴァル先輩のあの可愛らしい素顔を引き出せているのが自分なのだとしたら、なんだか胸が甘くキュッとしてしまう。