「……では、俺からも聞こう」
「へ?」
突然の逆質問に首を傾げると、先輩はどこか探るような鋭い視線を向けてくる。
「なぜお前は俺を『神城先輩』と呼ぶ」
「え、特に深い意味は……」
答えに詰まっていると、先輩の表情がぐっと険しくなった。
「では、なぜ東條寺のことは『侑季先輩』と名前で呼ぶ」
「あ……えと、その方が呼びやすかったといいますか……っ」
予想外の追及に、私はタジタジになって後ずさった。
そんな私を逃がさないように、先輩が一歩詰め寄ってきた。
冷たくて甘いプレッシャーが押し寄せる。
「……俺も名前で呼ぶか、東條寺の名前呼びを辞めろ」
「えええっ!? そう言われましても……!」
「どちらか選べ。……他の男に優位を取られるなど、あってはならんからな」
名前呼びは先輩の中で優位の証なんだ……!
真剣そのものの瞳で見つめられて逃げ場はない。
私は観念して、恥ずかしさを押し殺しながら小さく口を開いた。
「うう……じゃあ、ヴァル……先輩」
「ふむ、良いだろう」
神城先輩……いや、ヴァル先輩は、満足げに目を細めると小さく頷く。
その誇らしげで嬉しそうな横顔に、私の心臓はまたしても大きく跳ね上がってしまうのだった。

