「……っ!?」
吸血鬼である神城先輩は、普段は新鮮な血液か、最高級の紅茶しか口にしない。
人間の固形物、しかも出汁と砂糖が入った甘い卵焼きなんて、彼の舌にはあまりにも異物すぎたんだ。
「う……っ……」
神城先輩はあからさまに苦しそうな、今にも吐き出しそうな顔をしている。
「神城先輩! 吐き出してください! ティッシュ持ってきますから!」
「……んっ……不要だ」
「飲み込んだ!?」
先輩は驚異の精神力と意地で、卵焼きを喉の奥へと強引に飲み込んだ。
「……あ、あの、大丈夫ですか……? 無理して食べなくても良かったのに……」
「黙れ」
低い冷たい言葉。
「うう……」と苦しそうに喉を押さえながら、神城先輩は恥ずかしさと怒りが混ざったような声で、捨てゼリフのように吐き捨てた。
「……ああいう真似は、二度とするな」
「え……?」
「俺以外の男に付け入る隙を与えるな、と言っている!お前はもう少し、俺の番である自覚を持て……っ!」
「神城先輩……」
それだけ言い切ると、神城先輩はバタンと激しい音を立てて、逃げるように会長室へと戻っていってしまった。

