スッ……と、彼の手が伸びてきた。
逃げる隙なんてない。
私の右手首が、彼の冷たくて力強い指にキュッと掴まれる。
「ひっ……!?」
「じっとしていろ」
驚く私をよそに、彼は私の右手を顔の高さまで持ち上げた。
指先が、彼の薄い唇へと近づいていく。
「な、なにを──」
私の人差し指の腹が、会長の柔らかくて冷たい唇に触れた。
――その時。
偶然彼の口元から覗いたのは──尋常じゃないほど鋭く尖った犬歯。
え……なに、それ……!?
歯、鋭すぎない……!?
思考が完全にフリーズする。
チクリ。
「っ痛……!?」
針で突かれたみたいな、鋭い痛みが指先に走った。
思わず身体が跳ね上がる。
私の指先から、赤い血がぽたりとひとしずく溢れ出した。
何が起きたのかさっぱり分からなくて、頭の中はパニック状態。

