「ここに来る前は、どんな生活をしていたんだ?」
「えっと、本当に普通ですよ? 朝起きて、おばあちゃんとご飯を食べて、学校に行って友達とテレビの話をして……放課後はスーパーのタイムセールに走ったりして」
「たいむせーる……?」
首をひねる先輩に、私はクスッと笑ってしまう。
「安売りのお買い物です! あとは……お家の夜ご飯で、おばあちゃんの手作りの肉じゃがを食べるのが大好きでした」
「肉じゃが……聞いたことはあるな。甘辛く煮た人間の家庭料理だろう」
「はい! じゃがいもとお肉がホクホクして、すごく美味しいんですよ」
ヴァル先輩はふむと顎に手を当て、何かを思い出すように呟いた。
「……手作り、か。お前の手作りのお弁当も、甘くて……まあ、悪くはなかった」
「ふふ! あの時の卵焼きですね」
「む……」
「先輩、あの時すっごく変な顔して食べてましたもんね。『う…っ』て吐き出しそうになりながら無理して!」
「ぶ、不躾なことを言うな! 俺はただ、味わっていただけだ!」
不機嫌そうに横を向くヴァル先輩だったけれど、その耳は隠しきれないほどほんのり真っ赤に染まっていた。
意地を張る姿が、やっぱりどこか可愛らしくてたまらない。

