「でしょう? よし、決まり! 今から行きましょう!」
私のリアクションを見て、セシル先輩は嬉しそうに私の両手をとった。
だけど──まさにその時だった。
「待て」
氷のように冷ややかな声が、部屋の空気をピキッと凍りつかせる。
後ろからすっ……と割り込んできたのは、漆黒の髪を揺らしたヴァル先輩だった。
いつの間にか書類の整理を終えていた彼が、不機嫌そうに美しい眉をひそめている。
「俺の許可なくあかりを連れ出すな」
「ええ〜、会長ったら」
「ええ〜、ではない。俺の目の届かない場所へ軽々しく行かせるわけにはいかん。会議で話した通り最近学内で怪しい動きもある。どこにどんな危険が潜んでいるか分からんだろう」
胸の前で重々しく腕を組み、難色を示すヴァル先輩。
だけど、セシル先輩は「もう、会長ったら心配性なんだから!」とクスリと笑うだけで、まったく動じる様子がない。
「大丈夫よ、学園の目と鼻の先にあるカフェだもの。それに、たまにはあかりちゃんにも息抜きが必要よ! ね、行きましょあかりちゃん!」
「あ……ちょっと、セシル先輩!?」
セシル先輩はヴァル先輩の鋭い眼光をさらりと受け流すと、私の手首をキュッと掴んで、脱兎のごとく生徒会室を飛び出した。
「あ、待てセシル……! おい、あかり……!」
後ろから聞こえてくるヴァル先輩の戸惑うような声を置き去りにして、私たちは廊下をダッシュで駆け抜けた。

