キミがいたから。



───翌朝。

私はいつもより早く学校へ来ていた。昨日のことが、まだ夢みたいで…


――爽と、付き合うことになった。

そう思うだけで、頬が熱くなる。

「おはよう、燈」

「……っ!」

後ろから聞こえた声に、私は振り返った。

「お、おはよう……爽」

「なんでそんなに緊張してるの?」

「だって……昨日までと違うから」

「何が?」

「……その……」

私は小さな声で呟く。

「……恋人、だから」


爽が一瞬固まった。そして、顔を赤くして笑った。

「……それ、朝から言う?」

「そっちが言わせたんだし…だって本当のことだもん」

 
2人で笑う。

その光景を、教室の入り口から見ていた美桜が見逃すはずもなかった。

「燈」

「……美桜」

「ちょっとこっち来て」

「え?」

美桜に腕を引かれ、教室の隅へ連れていかれる。

「昨日、どうだったの?」

「……」

「告白した?」

私は顔を真っ赤にする。

「……した」

「えっ!」

美桜の声が教室中に響く。

「ちょっと!」

「ご、ごめん!」

───燈まで笑ってしまう。

「それで?」

「……付き合うことになった」

「――ほんと!?」

美桜が私の両肩を掴む。

「よかったじゃん!」

「うん……」

美桜は嬉しそうに笑った

「すごく、嬉しい」

 その笑顔を見て、美桜も嬉しそうに笑う。

「燈、本当に変わったね」

「……そうかな」

「うん。前の燈なら、こんな顔で“嬉しい”なんて言えなかったと思う」

私はは少しだけ考えてみる。確かにそうかもしれない。

───以前の自分なら…誰かを好きになることも。

その気持ちを伝えることも、怖くてできなかった。


でも今は違う。

自分から誰かを好きになって、自分から一歩踏み出して。

そして、その気持ちを受け取ってもらえた。

それだけで、世界が少し明るく見えた。

「野村さん」



───突然、クラスメイトから声をかけられる。

「昨日の課題、どこまでやった?」

「あ、えっと……ここまで」

「ほんと? じゃあ一緒に確認しよ」

「うん!」



自然に会話が始まる。別の子も話しかけてくる。

「燈ってこの問題得意?」

「全然! むしろ苦手!」

「え、意外!」

「ほんとだって!」

───笑い声が教室に響く。

私はふと、周りを見渡した。

以前は、自分だけが教室から切り離されているように感じていた。

でも今は……ここにいる。


みんなと話している。笑っている。


それが、なんだか嬉しかった。

「燈」

 少し離れたところから爽が呼ぶ。

「ん?」

「楽しそうだね」

「うん!」

私は笑顔で答えた。“上手くやっていけるよ”そんな意味を込めて…


「すごく楽しい」

 爽も笑う。

「そっか」

その顔を見て、私は思った…爽と付き合えたから、全部が変わったわけじゃない。


変わろうとした自分を、爽が見つけてくれた。

友達が支えてくれた

───そして、自分自身も一歩ずつ前へ進んだ。

だから今、こんなふうに笑えている。

「ねえ、爽」

「ん?」


「私、もっと友達作りたい」

「いいじゃん」

「もっとみんなと話したい」

「燈ならできるよ」

「……うん!」

燈は笑った。

窓から差し込む冬の光が、教室を柔らかく照らしている。

もう、暗闇ではないよ……

私の周りには、たくさんの人がいる。

友達がいる。

そして――、大切な人がいる。

私は爽の隣で笑いながら、今日も新しい一日を歩き始めた。



――キミがいたから…

私は、笑えるようになった。

そして今度は私が誰かの“支える理由”になれるように…

そんな未来を、少しだけ楽しみにしながら……。