キミがいたから。



───放課後。

2人は約束していた場所へ向かった。

以前、2人で話した階段の踊り場…

窓から夕焼けが差し込んでいる。

「……燈」

「うん」

「昨日の続き、聞かせて」

私は胸の前で手を握る。

「私ね……」

一度、深呼吸する。

「…高校に来たとき、変わりたいって思ってた」


───言葉が震えるけれど…

「うん」

「でも、ずっと怖かった」

爽は黙って聞いている。

「また嫌われたらどうしようって。誰かに笑われたらどうしようって」

───上手く言えないけれど…


私の目に涙が浮かぶ。

「そんな私に、最初に声をかけてくれたのが爽だった」


───キミは聞いてくれるよね。

「……」

「爽がいたから、学校に来るのが少し楽しみになった」

私は今日1番の…出会った時よりずっと眩しい笑顔で笑った


「───爽がいたから、友達もできた」

「……うん」

「爽がいたから、自分のことを少し好きになれた」

そして…私は爽太郎をまっすぐ見つめた。

「だから……」

指先が震える。

「私――」

「待って」

それまで静かに相槌を打ってくれていた爽が口を開いた。

「……え?」

「その前に、俺から言っていい?」

───燈は驚いた。

爽は、いつもの余裕のある笑顔ではなかった。

少し緊張したような顔、

「俺さ」

「うん」

「燈が最初に道に迷ってたとき、助けたのは本当に偶然だった」

「……うん」

「でも、何度か話すようになってから……燈のことが気になって仕方なくなった」

燈の目が大きくなる。同じ、気持ちだったと期待してもいいの?

「朝、燈が教室に来ると安心した」

「……」

「笑ってると嬉しかった」

「……爽」

「逆に、俺から離れていったときは……すごく寂しかった」

───胸が熱くなる。あのときだ…

爽が「一人で決めつけないで」と言った理由、

それは───

「燈が俺のことを避けてるのが、嫌だった」


「……どうして?」

爽は少しだけ笑った。

「燈が、俺にとって特別だったから」

その言葉に、私の目から涙が落ちた。


「……特別?」

「うん」

「友達として?」

───期待してしまう、ドキドキと心臓がうるさい。顔だってきっと真っ赤だろう…


爽は少し黙る。

そして

「……それだけじゃないと思う」

───燈の心臓が、跳ねた。