鷹司玲華(たかつかさ れいか)はたぶん、この学園でいちばん「完璧」という言葉が似合う人だ。
私立桐鳳(とうほう)学園高等部。二年、学年首席。生徒会長。弓道部では一年生のときから全国大会に出場し、教師にも生徒にも一目置かれている。世界的な企業グループの一人娘だという話まで含めれば、俺とは住んでいる世界がまるで違う。
廊下ですれ違うだけで空気が変わる。そんな大げさな表現がしっくりくる人間が本当にいるのだと、俺はこの学園に入って初めて知った。
そんな六月初めのある日。
「笹岡くん。少し、よろしいですか」
放課後の教室で彼女に名前を呼ばれたとき、俺は反射的に自分以外の笹岡を捜してしまった。分かっていながら、つい周囲を見回してしまう。
「俺ですか?」
「この教室に、ほかの笹岡くんがいるのですか」
「いませんけど」
玲華は教室の入り口に立ったまま、わずかに眉を寄せた。長い黒髪は乱れひとつなく、制服の襟元もきっちり整っている。教室中の視線を集めているのに本人は少しも気にした様子がない。むしろ視線を集めることに慣れすぎていて、それを気にする発想自体が存在しないように見えた。
「生徒会から、備品破損について報告がありました」
その言葉を聞いた瞬間、教室に残っていた何人かがさっと目をそらした。露骨すぎて逆に怪しい。刑事ドラマなら真っ先に疑われるタイプの反応だった。
嫌な予感がした。
「二年三組が借りていた掲示用パネルが壊れています。返却を担当したのは笹岡くんだと聞きました」
「待ってください。俺が運んだときは壊れてませんでした」
「そうでしょうね」
「……え?」
思わず聞き返すと、玲華は手にしていた書類を開いた。紙をめくる仕草ひとつにも無駄がない。
「貸出記録と廊下の防犯映像を確認しました。破損した時刻に、あなたはすでに校舎を出ています」
教室の空気が止まった。
玲華は俺を疑いに来たのではない。俺が疑われていると知って、その間違いを正しに来たのだ。
しかも証拠つきで。
「ただし、まだ確認したいことがあります」
彼女は教室の奥へ視線を向けた。
「笹岡くん一人に責任を負わせようとした方は、今ここで名乗り出てください」
声を荒らげたわけではない。それでも誰も逆らえないほど確かな強さがあった。教室の温度が二度くらい下がった気がする。
しばらくの沈黙のあと、窓際にいた男子生徒がおずおずと手を挙げた。運ぶ途中で自分がぶつけてしまい、怒られるのが怖くて黙っていたと小さな声で白状する。
玲華はその生徒を責めなかった。
「正直に言ってくれてありがとうございます。壊れたことより、人に罪を押しつけたままにすることのほうが問題です」
それだけ言うと、彼女は担任のところへ報告に向かった。あとに残された教室では誰もが安堵とも気まずさともつかない顔をしていた。俺自身、疑いが晴れたというのに、なぜか肩の力が抜けきらなかった。
これが、鷹司玲華。
誰よりも正しく、誰よりも頼もしい、完璧な生徒会長。
先月、三年生から引き継ぐ形で行われた生徒会選挙では、圧倒的な支持を集め、新会長に選ばれた。
俺は正直、礼を言うタイミングを逃していた。教室を出ていく背中に声をかけるには、彼女はあまりに堂々としていて近寄りがたかったからだ。芸能人にサインを頼むときの緊張感に近い、と言えば伝わるだろうか。相手はただの同学年の女子生徒のはずなのに。
それでもこのまま黙っているのは据わりが悪い。
鞄を持って教室を出ると、廊下の先で生徒会副会長の花崎美桜が噂話をしていた女子たちに何か言っているのが見えた。玲華の友人らしい機転の良さで、変な尾ひれがつく前に話を収めているようだった。愛想のいい笑顔のまま釘を刺す、あの独特の話術は本当にどこで身につけるものなのだろう。
俺は職員室の前で、担任と話し終えた玲華を待つことにした。少し離れた柱の陰で鞄の紐をいじりながらどう切り出すか考える。「ありがとうございました」だけで済ませていいものか、それとも何か気の利いたことを言うべきか。
結局、頭の中で候補を五つほど作っては消し、また作っては消しを繰り返した。
考えている間に玲華は、職員室を出て迷いのない足取りで昇降口へ向かってしまった。
声をかけそびれた。
仕方なく俺はいつも通り駅へ向かうことにした。今日は店の手伝いがある日で、あまりのんびりもしていられない。父さんに「今日も遅刻気味だな」と言われるのだけは避けたかった。
ところが改札の前まで来たところで、俺は思わず足を止めた。
制服姿の玲華が、改札の前で立ち尽くしていたのだ。
いつもの堂々とした様子とは違う。眉間にしわを寄せ、ICカードらしきものを手に、じっと自動改札機を睨みつけている。まるで難解な入試問題と向き合っているような真剣さだった。
何をしているんだろうと思いながら近づくと、玲華は俺に気づいて一瞬だけ動揺したような顔をした。すぐにその表情を消して平静を装う。切り替えの早さだけは、さすが生徒会長というべきか。
「笹岡くん」
「鷹司さん? どうしたんですか、こんなところで」
「これは、周辺設備の確認です」
「……周辺設備」
苦しい言い訳だということは俺にもすぐに分かった。周辺設備の確認をする人間が、こんな険しい顔で改札機と睨めっこするわけがない。
玲華はもう一度、改札にカードをかざす仕草をしてみせる。だがかざす角度が明後日の方向で、機械に反応するはずもない。センサー部分から十センチ以上離れた宙をなぞっているだけだった。
「もしかして、電車、乗ったことないんですか?」
直球で聞くと、玲華はわずかに口ごもった。
「……ないとは言っていません」
「じゃあ、あるんですか」
「……」
沈黙は答えのようなものだった。プライドと事実がせめぎ合っている表情、というものを俺は初めて生で見た気がする。
俺は笑いをこらえながら、彼女の持っているICカードを覗き込む。チャージ済みの真新しいカードで、明らかに今日初めて使うもののように見えた。角も丸まっていないし傷ひとつない。
「貸してください。教えますから」
「私は生徒会長です。このくらい、自分で――」
「じゃあ、あと五分くらい格闘してみます? もうすぐ次の電車が来ますけど」
玲華は悔しそうに俺を睨んだが、やがて小さくため息をついてカードを差し出した。
「……お願いします」
素直に頼まれると、こっちが調子を狂わされる。学園中が知る完璧な生徒会長に、こんな風に頼み事をされる日が来るとは思わなかった。
俺は自分の定期を先に通して見せ、次に玲華のカードを軽く握らせてタッチする位置と角度を教えた。二度目でようやく扉が開き、玲華は驚いたように自分の手元を見つめる。
「開きました」
「はい。よくできました」
「馬鹿にしていますか」
「してません。褒めてます」
本当に褒めていた。何しろ相手は今、人生で初めて自動改札を突破したところなのだ。
ホームへ向かう階段でも玲華は物珍しそうに周囲を見渡していた。電光掲示板、券売機の列、飲み物の自動販売機。何もかもが初めて見るもののように映っているらしい。
途中、階段の脇に置かれた広告用のパネルに、玲華は一瞬だけ視線を止めた。カップ麺の新商品を紹介する広告だった。
「あれは、有名な料理人が監修しているものでしょうか」
「たぶん、普通のカップ麺だと思いますけど」
「そう、ですか」
残念そうな声のトーンに、俺は思わず笑いそうになった。相当なグルメか、そうでなければ本気でカップ麺を高級品だと信じているかのどちらかだ。
電車に乗り込むと、玲華はどこに立てばいいのかも分からない様子で、俺のすぐそばで手すりを両手で握りしめていた。周りの乗客がスマートフォンを見ている中、玲華だけが車内の路線図を食い入るように見つめている。
「一つだけ聞いていいですか」
「何でしょう」
「鷹司さんって、今までどうやって学校に通ってたんですか?」
「家の車です」
「毎日?」
「毎日です」
その返事に俺は言葉を失った。この学園には電車通学の生徒も多い。玲華ほどの家なら車で送迎されていても不思議ではない。だが、毎日そうして通学し、自分で電車に乗った経験さえほとんどないとは思っていなかった。
「今日はどうして車じゃないんですか?」
尋ねると、玲華の表情がわずかに硬くなった。
「祖父の見舞いに、一人で行きたかったので」
「一人で?」
「迎えの車を頼むと、運転手から父に報告が行きます。今日くらいは、誰にも知らせずに会いに行きたいと思いました」
その声はいつもの凛とした生徒会長のものではなく、どこか年相応の意地を張る少女のもののように聞こえた。窓の外を見つめる横顔には、これまで教室で見たどの表情とも違う、頼りなさのようなものが滲んでいた。
俺は少し迷ってから口を開いた。
「病院、どこですか?」
「え?」
「案内します。電車、まだ慣れてないでしょう」
玲華は驚いた顔で俺を見た。それから何か言いかけては止め、最終的に小さくうなずいた。
「……ご迷惑でなければ」
「迷惑なら最初から言いません」
窓の外を流れていく街並みを、玲華はじっと見つめていた。財閥の跡取り娘として生きてきた彼女にとって、電車の窓から見る景色さえきっと初めてに近いものなのだろう。夕方に向かう街の色が、車窓越しにゆっくりと橙へ変わっていく。
まさかほんの数十分前、教室で堂々と真相を暴いていた生徒会長が、今は隣で緊張した顔をして電車に揺られているとは。
このときの俺は、ただ玲華の意外な一面を知っただけだと思っていた。
それが、これから何度も彼女と放課後を過ごすきっかけになるとは、まだ知らなかった。
私立桐鳳(とうほう)学園高等部。二年、学年首席。生徒会長。弓道部では一年生のときから全国大会に出場し、教師にも生徒にも一目置かれている。世界的な企業グループの一人娘だという話まで含めれば、俺とは住んでいる世界がまるで違う。
廊下ですれ違うだけで空気が変わる。そんな大げさな表現がしっくりくる人間が本当にいるのだと、俺はこの学園に入って初めて知った。
そんな六月初めのある日。
「笹岡くん。少し、よろしいですか」
放課後の教室で彼女に名前を呼ばれたとき、俺は反射的に自分以外の笹岡を捜してしまった。分かっていながら、つい周囲を見回してしまう。
「俺ですか?」
「この教室に、ほかの笹岡くんがいるのですか」
「いませんけど」
玲華は教室の入り口に立ったまま、わずかに眉を寄せた。長い黒髪は乱れひとつなく、制服の襟元もきっちり整っている。教室中の視線を集めているのに本人は少しも気にした様子がない。むしろ視線を集めることに慣れすぎていて、それを気にする発想自体が存在しないように見えた。
「生徒会から、備品破損について報告がありました」
その言葉を聞いた瞬間、教室に残っていた何人かがさっと目をそらした。露骨すぎて逆に怪しい。刑事ドラマなら真っ先に疑われるタイプの反応だった。
嫌な予感がした。
「二年三組が借りていた掲示用パネルが壊れています。返却を担当したのは笹岡くんだと聞きました」
「待ってください。俺が運んだときは壊れてませんでした」
「そうでしょうね」
「……え?」
思わず聞き返すと、玲華は手にしていた書類を開いた。紙をめくる仕草ひとつにも無駄がない。
「貸出記録と廊下の防犯映像を確認しました。破損した時刻に、あなたはすでに校舎を出ています」
教室の空気が止まった。
玲華は俺を疑いに来たのではない。俺が疑われていると知って、その間違いを正しに来たのだ。
しかも証拠つきで。
「ただし、まだ確認したいことがあります」
彼女は教室の奥へ視線を向けた。
「笹岡くん一人に責任を負わせようとした方は、今ここで名乗り出てください」
声を荒らげたわけではない。それでも誰も逆らえないほど確かな強さがあった。教室の温度が二度くらい下がった気がする。
しばらくの沈黙のあと、窓際にいた男子生徒がおずおずと手を挙げた。運ぶ途中で自分がぶつけてしまい、怒られるのが怖くて黙っていたと小さな声で白状する。
玲華はその生徒を責めなかった。
「正直に言ってくれてありがとうございます。壊れたことより、人に罪を押しつけたままにすることのほうが問題です」
それだけ言うと、彼女は担任のところへ報告に向かった。あとに残された教室では誰もが安堵とも気まずさともつかない顔をしていた。俺自身、疑いが晴れたというのに、なぜか肩の力が抜けきらなかった。
これが、鷹司玲華。
誰よりも正しく、誰よりも頼もしい、完璧な生徒会長。
先月、三年生から引き継ぐ形で行われた生徒会選挙では、圧倒的な支持を集め、新会長に選ばれた。
俺は正直、礼を言うタイミングを逃していた。教室を出ていく背中に声をかけるには、彼女はあまりに堂々としていて近寄りがたかったからだ。芸能人にサインを頼むときの緊張感に近い、と言えば伝わるだろうか。相手はただの同学年の女子生徒のはずなのに。
それでもこのまま黙っているのは据わりが悪い。
鞄を持って教室を出ると、廊下の先で生徒会副会長の花崎美桜が噂話をしていた女子たちに何か言っているのが見えた。玲華の友人らしい機転の良さで、変な尾ひれがつく前に話を収めているようだった。愛想のいい笑顔のまま釘を刺す、あの独特の話術は本当にどこで身につけるものなのだろう。
俺は職員室の前で、担任と話し終えた玲華を待つことにした。少し離れた柱の陰で鞄の紐をいじりながらどう切り出すか考える。「ありがとうございました」だけで済ませていいものか、それとも何か気の利いたことを言うべきか。
結局、頭の中で候補を五つほど作っては消し、また作っては消しを繰り返した。
考えている間に玲華は、職員室を出て迷いのない足取りで昇降口へ向かってしまった。
声をかけそびれた。
仕方なく俺はいつも通り駅へ向かうことにした。今日は店の手伝いがある日で、あまりのんびりもしていられない。父さんに「今日も遅刻気味だな」と言われるのだけは避けたかった。
ところが改札の前まで来たところで、俺は思わず足を止めた。
制服姿の玲華が、改札の前で立ち尽くしていたのだ。
いつもの堂々とした様子とは違う。眉間にしわを寄せ、ICカードらしきものを手に、じっと自動改札機を睨みつけている。まるで難解な入試問題と向き合っているような真剣さだった。
何をしているんだろうと思いながら近づくと、玲華は俺に気づいて一瞬だけ動揺したような顔をした。すぐにその表情を消して平静を装う。切り替えの早さだけは、さすが生徒会長というべきか。
「笹岡くん」
「鷹司さん? どうしたんですか、こんなところで」
「これは、周辺設備の確認です」
「……周辺設備」
苦しい言い訳だということは俺にもすぐに分かった。周辺設備の確認をする人間が、こんな険しい顔で改札機と睨めっこするわけがない。
玲華はもう一度、改札にカードをかざす仕草をしてみせる。だがかざす角度が明後日の方向で、機械に反応するはずもない。センサー部分から十センチ以上離れた宙をなぞっているだけだった。
「もしかして、電車、乗ったことないんですか?」
直球で聞くと、玲華はわずかに口ごもった。
「……ないとは言っていません」
「じゃあ、あるんですか」
「……」
沈黙は答えのようなものだった。プライドと事実がせめぎ合っている表情、というものを俺は初めて生で見た気がする。
俺は笑いをこらえながら、彼女の持っているICカードを覗き込む。チャージ済みの真新しいカードで、明らかに今日初めて使うもののように見えた。角も丸まっていないし傷ひとつない。
「貸してください。教えますから」
「私は生徒会長です。このくらい、自分で――」
「じゃあ、あと五分くらい格闘してみます? もうすぐ次の電車が来ますけど」
玲華は悔しそうに俺を睨んだが、やがて小さくため息をついてカードを差し出した。
「……お願いします」
素直に頼まれると、こっちが調子を狂わされる。学園中が知る完璧な生徒会長に、こんな風に頼み事をされる日が来るとは思わなかった。
俺は自分の定期を先に通して見せ、次に玲華のカードを軽く握らせてタッチする位置と角度を教えた。二度目でようやく扉が開き、玲華は驚いたように自分の手元を見つめる。
「開きました」
「はい。よくできました」
「馬鹿にしていますか」
「してません。褒めてます」
本当に褒めていた。何しろ相手は今、人生で初めて自動改札を突破したところなのだ。
ホームへ向かう階段でも玲華は物珍しそうに周囲を見渡していた。電光掲示板、券売機の列、飲み物の自動販売機。何もかもが初めて見るもののように映っているらしい。
途中、階段の脇に置かれた広告用のパネルに、玲華は一瞬だけ視線を止めた。カップ麺の新商品を紹介する広告だった。
「あれは、有名な料理人が監修しているものでしょうか」
「たぶん、普通のカップ麺だと思いますけど」
「そう、ですか」
残念そうな声のトーンに、俺は思わず笑いそうになった。相当なグルメか、そうでなければ本気でカップ麺を高級品だと信じているかのどちらかだ。
電車に乗り込むと、玲華はどこに立てばいいのかも分からない様子で、俺のすぐそばで手すりを両手で握りしめていた。周りの乗客がスマートフォンを見ている中、玲華だけが車内の路線図を食い入るように見つめている。
「一つだけ聞いていいですか」
「何でしょう」
「鷹司さんって、今までどうやって学校に通ってたんですか?」
「家の車です」
「毎日?」
「毎日です」
その返事に俺は言葉を失った。この学園には電車通学の生徒も多い。玲華ほどの家なら車で送迎されていても不思議ではない。だが、毎日そうして通学し、自分で電車に乗った経験さえほとんどないとは思っていなかった。
「今日はどうして車じゃないんですか?」
尋ねると、玲華の表情がわずかに硬くなった。
「祖父の見舞いに、一人で行きたかったので」
「一人で?」
「迎えの車を頼むと、運転手から父に報告が行きます。今日くらいは、誰にも知らせずに会いに行きたいと思いました」
その声はいつもの凛とした生徒会長のものではなく、どこか年相応の意地を張る少女のもののように聞こえた。窓の外を見つめる横顔には、これまで教室で見たどの表情とも違う、頼りなさのようなものが滲んでいた。
俺は少し迷ってから口を開いた。
「病院、どこですか?」
「え?」
「案内します。電車、まだ慣れてないでしょう」
玲華は驚いた顔で俺を見た。それから何か言いかけては止め、最終的に小さくうなずいた。
「……ご迷惑でなければ」
「迷惑なら最初から言いません」
窓の外を流れていく街並みを、玲華はじっと見つめていた。財閥の跡取り娘として生きてきた彼女にとって、電車の窓から見る景色さえきっと初めてに近いものなのだろう。夕方に向かう街の色が、車窓越しにゆっくりと橙へ変わっていく。
まさかほんの数十分前、教室で堂々と真相を暴いていた生徒会長が、今は隣で緊張した顔をして電車に揺られているとは。
このときの俺は、ただ玲華の意外な一面を知っただけだと思っていた。
それが、これから何度も彼女と放課後を過ごすきっかけになるとは、まだ知らなかった。



