【偽】カップルですが、本当の恋を教えてください

「・・・ん」
私の方に顔をうずめていた緋雁がこちらを見ると、思ったよりも距離が近くて・・・。
なんか、顔が近くて・・・その瞳に吸い込まれそうになって・・・。
「・・・っ」

気が付くと、お互いの唇が重なっていた。

驚くほど静かで、目を見開いて緋雁を見つめることしかできない。
下から掬いあげるように唇をふさがれ、だんだん息が苦しくなってきた。
「っひか、」
「桃祢、・・・誰にも渡さないから」
それから私がどうしたのか、覚えていない。
演技を覗けばファーストキスだったことなんて、どうでもいい。
私の中では、緋雁とキスしたという衝撃が大きくて。
あの、真っ直ぐで逃れられなくて、でも切ない瞳が頭から離れなくて。
そのまま、だれとも言葉を交わさずにベッドに入ってしまった。

♡───────────────────────♡

「おはよう桃祢」
「っおは、よう」
次の日の朝、緋雁じゃ驚くほどにいつも通りだった。
それはもう、昨日のことなんて夢だったんじゃないかと思うくらい。
メンバーの前でも‟いつも通り”を崩さない緋雁に戸惑いつつも、私もできるけど‟いつも通り”過ごしてたんだけど・・・。

「ねぇ待って・・・やっさんから連絡来てる」
「え?どうかしたの?」
「桃祢・・・」
私以外は、普段となんら変わらない日常だったはずだ。
しかし、しののんからの連絡を見た珀が、真っ青な顔で私を見つめた。
「も、ね・・・」
「っねぇ、どうしたの珀」
口を震わせ、恐ろしい形相でスマホを睨む珀。
あぁもう、焦れったい・・・!
「ね、熱愛・・・」
「・・・え?」

「桃祢と神楽さんの、熱愛報道出てる・・・!」

・・・えっ?私と桜貴さんの・・・熱愛報道?
共演しただけ・・・恋愛ドラマで共演しただけだよ・・・⁉
「記事回して」
すぐに拍のスマホに送られた記事を私のスマホにも回してもらい、内容を確認する。
「なにこれ・・・」

『オフショットでお互いを見つめる愛おしそうな瞳』
『SNSで同じブランド品を多数投稿、お互いのSNSをフォロー』
『ドラマ共演で芽生えた‟本当の恋心”』

待って・・・無自覚にSNSで匂わせしてた・・・⁉
共演してるから桜貴さんのSNSはフォローしてたけど、実は彼の投稿は見たことがない。
急いで確認してみると、確かに同じブランド品の写真を投稿していた。