【偽】カップルですが、本当の恋を教えてください

「ありがとう、珀」
「え?・・・どういたしまして」
「俺は?俺には?」
「いつもありがとう葛」
思い返せば珀はいつも、誰よりもメンバーを想っていて。
なんでも自分事のように感じで寄り添ってくれて。
私はそんな珀が大好きで・・・え?うん、大好きで・・・え?
なんだろう・・・緋雁の対する‟好き”と、珀に対する‟好き”、なにか違うような。
・・・ま、いっか!どちらにしろ2人とも・・・葛ももちろん大好きだから!

「あ、榎宮さんから連絡来た。従弟と選定したベーシストに会ってほしいって」
「榎宮さんから!場所は?」
「すぐそこのスタジオだね」
前のアパートは事務所が所有するもので安く借りれていたから、契約終了後は他の満床んに引っ越して現在も同居中の私たち。
できるだけ練習できるように、スタジオの近くの物件を選んだんだけど。
榎宮さんから指定されたスタジオが、まさにそのスタジオだ。
気を遣ってくれたのかな。
「とくかく会ってみよう」
「そうだね。・・・え、今から⁉」
「うん、今からって書いてある」
「榎宮さん私たちのスケジュール把握してるの⁉」
運よく全員予定がない日だった・・・とは考え難い。
榎宮さんのことだから、なにかしら手をまわしたのかも・・・。

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指示通りのBスタジオ。
少し緊張しながら中に入ると、2人の男性が立っていた。
「初めまして・・・!市姫桃祢です!」
「伊丹緋雁です。こっちは音海珀亜と蛍火葛です」
片方の人は、柔らかい笑顔で印象的な、明るそうな人。
もう1人は、おどおどしてるけど見覚えがあるような・・・。
「榎宮南瑠の従弟の東雲(しののめ)聖(ひじり)です!」
「あ、ベーシストの・・・真白(ましろ)、燎(にわび)です・・・」
明るそうな人が榎宮さんの従弟・・・つまりマネージャーさん。
もう1人がベーシストの燎さんで、名前を聞いて確信した。
「燎さんって、『未完成』の時にベースやってくれてましたよね?」
「は、はいっ・・・覚えててくださったんですか・・・!」
やっぱり!燎さんは、夢さんが体調不良で長期休養に入っていた時のレコーディングに、1回だけ来てくれたベーシストさんだ。
こんなところで再会できるなんて・・・!

「えっと、・・・俺らは是非2人の力を貸してほしいって思ってます。どうでしょう・・・?」
「もちろんです!」
「よろしくお願いします・・・!」
聖さん、なんでこんなにもコミュ力が高くてはきはきでにこやかなのに、仕事がないんだろう?
不思議な人だ・・・でも、仲良くなれそう!
「お互いタメ口で話しましょーよ!‟しののん”と‟にわちゃん”って呼んでいい?」
なんとかして2人と距離を縮めたくてそう提案すると、すぐに2人は頷いてくれて、メンバーも続くように口を開く。
「聖(せい)ちゃんと燎でいくね」
「ひっさんと燎でいい?」
「聖(せい)くんと燎!」
早速メンバーと仲良くなれた2人の頬が緩むのを見ながら、久しぶりに見るメンバーのワクワク顔を観察する。
みんなが笑顔って・・・すごく幸せなことだなぁ。

「あ、南瑠が安心してたよ。Echolyが批判されなくてよかったって」

コメントを見て安心している榎宮さんの、あの眼鏡の奥の優しい笑みが想像できて、胸がきゅっと締め付けられる。
榎宮さん・・・元気かな。会社で嫌な思いしてないかな。

「Echolyはすごくいいグループだから、お前は全力で支えるんだぞって」

「聖くんストップ、桃祢が泣いちゃう」
「だ、だってぇ・・・!榎宮さ、んっ・・・!」
しののんに伝えていた榎宮さんの言葉に目頭が熱くなっていると、気づいた葛がしののんを止めた。
「あれぇ・・・涙もろいんだね、桃祢」
「感情豊かな子だからね。・・・演奏してみる?」
少しだけしんみりしていた空気を変えるように緋雁がそう言うと、しののんはパッと笑顔になって下がり、にわちゃんの表情が硬くなる。
「緊張する・・・」
ぼそりと言い、ぎこちない動きでベースを持つにわちゃん。
すると、その表情が・・・いや、待とうオーラが一瞬で変わった。
「『回転木馬』で。・・・珀お願い」
「ほい」