【偽】カップルですが、本当の恋を教えてください

「ファンを喜ばせるためです。なのでこれからは、緋雁と桃祢は付き合っているという認識で活動してください。別に公共の場でキスを求めたりなどはしません。付き合っているという設定を必ず守ること。訊かれたら答えるだけでいいので。
そんなこと・・・できないよ。
『Echolyの曲が好きです』って言ってくれるファンに、嘘を吐くなんて・・・!
「・・・4人に社長から伝えるように言われたのはここまでです。ここからはマネージャーとして話します」
・・・マネージャーとして?
タブレットを置いた榎宮さんはそう言い、何故か深く頭を下げた。

「申し訳ございません」
「・・・え?」
「僕は、Echolyに売れてほしいと、心から願っています」
謝罪をした後、真剣な顔でそういう榎宮さん。
そんな榎宮さんに対し、珀が厳しい声で返した。
「俺たちは嘘をついてファンを騙してまで売れたくない。音楽の力で売れるんだよ。こっちは名誉棄損と盗撮で訴えられるんだぞ」
「Echolyの考えは分かっています。その考えを理解しながらも社長を止められなかったことには責任を感じています。・・・ただ、少しの間・・・『カップルデュエット』として活動してくれませんか」
「はぁ?」
申し訳ないと言いながら嘘に加担してくれって・・・。
珀が言った通り、こっちは訴えることもできるのに。決して私たちも立場は弱くないのに。
榎宮さんが何を考えてるのか、まったく分かんないよ・・・っ!

「売れてほしいんです・・・。この戦略を利用して、売れてください。4人の力だけで売れていけるようになったら、独立してください。その時はカップルのことを否定して構いません。この会社を訴えても構いません。・・・僕は、Echolyに売れてほしい・・・」
利用・・・?独立・・・?
そんなのこと、榎宮さんが言っていいの・・・?
・・・でも、つまり榎宮さんは・・・私たちを応援してくれてるってこと?
だから私たちはこのチャンスで売れて、独立しろって・・・。
「・・・榎宮さん、もしかして」
葛が驚いたように榎宮さんを見ると、榎宮さんはいつになる優しい目で、優しい声で、・・・初めて、笑った。
「・・・4人のことは、年の離れた弟妹のように思っています。いつかは僕のことも、Echolyを利用した悪者だと切り捨ててください。あと、いつカメラが仕掛けてあるかわかりません。『カップルデュエット』の証拠として使われる可能性があるので、気を付けてください。・・・応援してますから」
そう言って、いつも通り伸びた背筋で部屋を出て行く榎宮さん。
そうだ・・・榎宮さんは社長の指示で動かざるを得なかったのに・・・私たち、榎宮さんに当たっちゃった。

「・・・もう、やるしかないか」
「早く売れればいいんでしょ」
「実力でこの会社見返してやろうぜ」
榎宮さんの言葉に火をつけられたのか、3人は怒りをどこかに捨てて、やる気に満ち溢れていた。
私もやらないと・・・榎宮さんの期待に応えたい・・・!

「よろしくね、彼女さん」
「えっ・・・裏でもやる必要ある?カメラあるかも・・・!」
「ん?ボロが出ないようにね」
「えぇぇぇぇ~・・・っ!」
ち、近い近いっ・・・離れて緋雁・・・っ!
メンバーの前で恋人ごっこも、何故か本気の緋雁の恥ずかしすぎるっ・・・。
『カップルデュエット』がいるバンドでの未来は、あまりにも前途多難すぎます・・・っ‼