月影に咲く、一輪の華

翌朝。

星羅「…………まだかなぁ」

目が覚めてから、何度目か分からないくらいスマホのカレンダーを確認していた。

今日は――待ちに待った遊園地の日。

しかも遥愛が少し早めに迎えに来てくれて、その前にどこかへ連れて行ってくれるらしい。

星羅「何だろう……」

星夜「まだ考えてんの?」

星羅「だって気になるもん!」

星夜「本人に聞けばいいのに」

星羅「絶対聞かない!」

星夜「はいはい」

星羅はベッドの上でごろんと転がりながら、スマホを見る。

星羅「……早く会いたいなぁ」

星夜「…………」

その呟きに、星夜が少しだけ笑う。

星夜「姉ちゃん、最近ほんと遥愛の話ばっかりだな」

星羅「そう?」

星夜「うん」

星羅「……だって、はるちゃん面白いし優しいし」

星夜「それだけ?」

星羅「それだけ!」

即答したものの、星羅自身も少しだけ不思議だった。

遥愛に会うと、なんとなく嬉しくなる。

一緒にいると楽しい。

もっと一緒にいたいと思う。

でも、それがどういう気持ちなのかまでは、まだ分からない。

星羅「……ふふっ」

星夜「何?」

星羅「楽しみ」

星夜「それは分かった」

そんなやり取りをしていると――。

ピコン。

星羅「……!」

スマホが震える。

星羅「はるちゃん!」

勢いよく画面を開く。

遥愛『もうすぐ迎えに行きます。準備できましたか?』

星羅「……!」

星羅は一瞬固まったあと、慌てて飛び起きる。

星羅「やばっ!」

星夜「何?」

星羅「もうすぐ来る!」

星夜「だから言っただろ。早く準備しろって」

星羅「どうしよう!」

星夜「どうしようじゃない」

星羅「髪!」

星夜「いつも通りでいいだろ」

星羅「服!」

星夜「もう決めてただろ」

星羅「……そうだった」

星夜「落ち着け」

星羅「あははっ!」

急いで準備を終える。

そして――。

倉庫の外から、車の音が聞こえた。

星羅「……来た!」

星羅の顔が一気に明るくなる。

星夜「行ってこい」

星羅「うん!」

星羅は玄関へ駆けていく。

扉を開ける。

そこには、遥愛が立っていた。

遥愛「おはようございます」

星羅「はるちゃん!」

星羅は嬉しそうに駆け寄る。

星羅「おはよう!」

遥愛「準備できました?」

星羅「うん!」

遥愛「じゃあ、行きましょうか」

星羅「うん!」

星羅は遥愛の隣へ並ぶ。

そして歩き出す前に――。

星羅「ねぇ、今日はどこに連れて行ってくれるの?」

遥愛「まだ秘密です」

星羅「えー!」

遥愛「着いてからのお楽しみです」

星羅「……分かった」

少し頬を膨らませながらも、すぐに笑顔になる。

星羅「じゃあ、楽しみにしてるね♡」

遥愛「はい」

二人は並んで歩き出した。

――そして少し離れた場所。

月影の倉庫の窓から、星夜が二人を見送っていた。

星夜「……楽しんでこいよ」

今日は尾行しない。

星羅が楽しみにしていた、遥愛との一日だから。

そのまま二人の姿が見えなくなるまで、星夜は静かに見送っていた。