月影に咲く、一輪の華

その頃――。

朱雀の倉庫では、遥愛が一人でスマホを眺めていた。

紅蓮「……なぁ」

遥愛「はい?」

紅蓮「本当に教えねぇの?」

遥愛「はい」

瑛翔「何でだよ!」

遥愛「当日まで秘密にしたいので」

瑛翔「俺たちにも?」

遥愛「はい」

朧「ふふっ。遥愛も星羅ちゃんを喜ばせたいんだね」

遥愛「……そうですね」

その答えに、瑛翔が少し黙る。

瑛翔「……ずるいなぁ」

刹那「…………」

紅蓮「まぁ、いいじゃねぇか。星羅が喜ぶなら」

瑛翔「でも気になる!」

遥愛「大したことじゃないですよ」

紅蓮「その言い方が余計怪しいんだよ」

遥愛は苦笑する。

実は、星羅が以前話していたことを覚えていた。

海で遊んだ日。

夏祭りを歩いた日。

星羅はずっと楽しそうだった。

けれどその中で、ふと――。

『いつか、朝から夜までゆっくり遊べたらいいなぁ』

そう言っていた。

だから遥愛は、遊園地へ行く前に少しだけ寄り道をすることにした。

特別な場所というわけではない。

けれど、星羅がきっと喜んでくれる場所。

遥愛「……楽しんでくれるといいんですけど」

朧「大丈夫だよ」

遥愛「?」

朧「星羅ちゃんは、遥愛と一緒ならきっとどこでも楽しむから」

遥愛「…………」

遥愛は少し照れたように笑った。

瑛翔「……それ聞くと余計悔しい」

紅蓮「お前はもう少し素直になれ」

瑛翔「俺だって素直だよ!」

刹那「…………うるさい」

瑛翔「刹那まで!?」

そんなやり取りをしていると――。

遥愛のスマホが震えた。

ピコン。

遥愛「…………」

画面には星羅からのメッセージ。

『はるちゃん、遊園地もうすぐだね♡』

その一文を見た瞬間、遥愛の表情が柔らかくなる。

遥愛『はい。楽しみにしていてください』

星羅『うん!めっちゃ楽しみ♡』

遥愛「…………」

自然と口元が緩む。

紅蓮「……お前」

遥愛「はい?」

紅蓮「今、めちゃくちゃ嬉しそうだったぞ」

遥愛「…………」

瑛翔「ほんとだ」

刹那「……珍しい」

朧「ふふっ」

遥愛「……そうですか?」

紅蓮「ああ」

遥愛は少し考えてから、スマホをしまう。

遥愛「……俺も楽しみなんだと思います」

その言葉に、今度は誰も茶化さなかった。

ただ、四人とも少しだけ複雑そうに笑う。

――星羅の「好き」がどこへ向かうのか。

まだ誰にも分からない。

でも少なくとも。

遥愛もまた、星羅との時間を楽しみにしている。

それだけは、もう隠しきれなくなっていた。