月影に咲く、一輪の華

翌日。

星羅「…………暇だなぁ」

朝から倉庫のソファーに寝転がり、スマホを眺めていた。

昨日は朱雀へ遊びに行って、その前は星夜と出かけて、その前には海と夏祭り。

さすがに今日は予定を入れていなかった。

星夜「今日は休むって言っただろ」

星羅「分かってるよぉ」

星羅はごろんと寝返りを打つ。

星羅「でも暇……」

豹牙「昨日あれだけ遊んで、もう暇なのかよ」

星羅「うん」

來夢「元気だね」

星羅「だって夏休みだもん」

朔夜「それ、何回聞いたかな」

星羅「あははっ」

そんな会話をしていると――。

ピコン。

星羅「……!」

スマホが震えた。

星羅は勢いよく起き上がる。

星夜「誰?」

星羅「……はるちゃん!」

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星羅は嬉しそうにメッセージを開く。

遥愛『今日はゆっくり休んでくださいね。昨日まで結構遊んでいたので』

星羅「…………」

星羅の口元が、ふっと緩む。

星羅「優しい……♡」

星夜「何て?」

星羅「今日は休んでって」

星夜「ちゃんと心配してくれてるじゃん」

星羅「うん」

星羅は嬉しそうに画面を眺める。

すると、少し考えてから返信を打ち始めた。

星羅『はるちゃんも今日はゆっくりしてね♡ 遊園地楽しみにしてる!』

送信。

星羅「ふふっ」

豹牙「……完全に浮かれてるな」

星羅「だって楽しみなんだもん」

夜凪「……遊園地、いつだっけ?」

星羅「○日!」

夜凪「……まだ少し先か」

星羅「うん」

夜凪は少し考えたあと、スマホを手に取った。

夜凪「……星羅」

星羅「ん?」

夜凪「今日じゃなくていいんだけど」

星羅「うん?」

夜凪「今度、二人で行く場所……決めないか?」

星羅「!」

星羅はすぐに起き上がる。

星羅「決めたい!」

夜凪「……どこがいい?」

星羅「えっと……」

少し考える。

星羅「夜凪となら、ゆっくりできるところがいいな」

夜凪「…………」

星羅「前に言ってたでしょ? 人が少なくて、ゆっくり話せるところ」

夜凪「ああ」

星羅「じゃあ、景色が綺麗なところ行こうよ」

夜凪「……いいな」

星羅「夕方とか!」

夜凪「それもいい」

二人が予定を話し始める。

それを見ていた豹牙たちは、少し離れたところで静かに笑った。

豹牙「……ちゃんと順番に距離縮めてんな」

來夢「うん」

朔夜「星羅も嬉しそう」

黒羽「…………」

星夜「姉ちゃん、本当にみんなと遊ぶ気なんだな」

星羅「もちろん!」

星羅は笑顔で答える。

星羅「みんな大好きだから!」

その一言に――。

月影の男たちは、一瞬だけ黙った。

星羅は何の気なしに言った言葉。

けれど、その言葉を受け取る側にとっては、胸が熱くなるくらい嬉しい。

星羅「……じゃあ、夜凪との予定も決めよっか」

夜凪「うん」

星羅はスマホのカレンダーを開く。

また一つ、夏休みの予定が増えていく。

そしてその日――。

星羅は思いがけず、夜凪との距離を少しだけ近づけることになる。