月影に咲く、一輪の華

星羅「よしっ!」

スマホを握りしめたまま、星羅の顔がぱっと明るくなる。

星夜「……何?」

星羅「はるちゃん、海に誘おうかな!」

星夜「海?」

星羅「うん! せっかく夏休みだし!」

星羅は楽しそうに指を折りながら話し始める。

星羅「海の家行って、焼きそば食べたい! かき氷も食べたいし、フランクフルトも食べたい!」

星夜「……食べることばっかりじゃん」

星羅「だって海の家のご飯って美味しいじゃん!」

星夜「まぁな」

星羅「よし!」

突然、星羅が何かを決意したように立ち上がった。

星羅「水着買おう!」

星夜「…………」

星羅「新しいの!」

星夜「持ってるだろ」

星羅「持ってるけど、海行くなら新しいの欲しい!」

星夜「姉ちゃん、完全に浮かれてるな」

星羅「だって夏休みだもん!」

星夜「はいはい」

星羅は嬉しそうに星夜の腕を引っ張る。

星羅「早く行こ!」

星夜「ちょ、待てって!」

星羅「買い物して、カフェ行って、そのあと焼肉!」

星夜「今日の予定、全部覚えてるんだな」

星羅「もちろん!」

二人はそのままショッピングモールへ向かった。

店に入ると、星羅は目を輝かせながら水着売り場へ直行する。

星羅「わぁ……いっぱいある!」

星夜「そんなに買うの?」

星羅「一個に決まってるでしょ」

星夜「ならいいけど」

星羅は次々と水着を手に取って見比べる。

星羅「これ可愛い!」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「俺に聞くなよ」

星羅「なんで?」

星夜「男の俺に水着の良し悪し分かるわけないだろ」

星羅「あははっ」

星夜「……でも」

星羅「?」

星夜「姉ちゃんが好きなの選べばいいんじゃない?」

星羅「…………」

星羅は少しだけ目を丸くして、それから嬉しそうに笑った。

星羅「じゃあ、これにしようかな」

星夜「いいんじゃない?」

星羅「ほんと?」

星夜「うん」

星羅「じゃあ決まり!」

水着を抱えて、星羅はご機嫌に歩き出す。

星羅「はるちゃん、これ見たら喜ぶかなぁ」

星夜「…………」

星羅「一緒に海行ったら楽しいだろうなぁ」

星夜「姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「俺とのデート中に遥愛の話しすぎ」

星羅「えっ」

星夜「さっきからずっとだぞ」

星羅「ご、ごめん」

星夜「……別にいいけど」

星羅「ふふっ」

星夜「ただ――」

星夜が少しだけ笑う。

星夜「今日は俺とのデートなんだから、ちゃんと俺も楽しませろよ」

星羅「…………!」

星羅は嬉しそうに笑った。

星羅「もちろん!」

そして星夜の腕にぎゅっとくっつく。

星羅「今日は星夜の日!」

星夜「……そういうこと」

星羅「じゃあ、次どこ行く?」

星夜「俺が決めていい?」

星羅「うん!」

星夜「じゃあ――」

星夜は少し考えてから、歩き出す。

星羅「どこ?」

星夜「秘密」

星羅「えー!」

二人の笑い声が、ショッピングモールの中に響いた。

――遥愛との海。

――星夜との今日のデート。

どちらも楽しみで仕方がない。

星羅にとって、久しぶりに自由に過ごせる夏休みが始まったばかりだった。