月影に咲く、一輪の華

星羅「……ふふっ」

星夜「まだ見てんの?」

星羅「だって嬉しいんだもん」

星夜「もう返事はもらってるだろ」

星羅「うん。だから今は、はるちゃんの予定が分かるの待ってる」

星夜「そっか」

星羅はスマホをテーブルに置いた。

そして、隣に座っている星夜を見る。

星羅「ねぇ、星夜」

星夜「ん?」

星羅「私たちもどっか行こうよ」

星夜「俺と?」

星羅「うん!」

星羅はにこっと笑う。

星羅「二人でデートしよーよ」

星夜「…………デート?」

星羅「うん。姉弟デート!」

星夜「……それ、デートって言うのか?」

星羅「いいじゃん!」

星夜「まぁ……いいけど」

星羅「やった!」

星羅は嬉しそうに星夜の腕に絡みつく。

星羅「どこ行く?」

星夜「姉ちゃんが行きたいところでいいよ」

星羅「えー、星夜とだから星夜が行きたいところも行きたい」

星夜「…………」

少し驚いたように星羅を見る。

星羅「どうしたの?」

星夜「いや……」

星夜は小さく笑った。

星夜「姉ちゃん、そういうこと言うようになったなって」

星羅「そう?」

星夜「うん」

星羅「じゃあ、二人で決めよ!」

星夜「何がいいかな」

星羅「映画?」

星夜「この前見たばっかじゃん」

星羅「あ、そうだった」

星羅は笑う。

星羅「じゃあ買い物!」

星夜「いいな」

星羅「そのあとカフェ行って、甘いもの食べよ」

星夜「それ姉ちゃんが行きたいだけじゃん」

星羅「だって星夜と食べたいんだもん」

星夜「…………」

また少し照れたように顔を逸らす。

星羅「ふふっ」

星夜「……じゃあ、それでいい」

星羅「ほんと?」

星夜「うん」

星羅「やったぁ!」

星羅は星夜の肩に頭を乗せる。

星羅「楽しみだね」

星夜「……そうだな」

その二人の姿を、少し離れた場所から月影のメンバーが見ていた。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

豹牙「……遥愛と離れたと思ったら、今度は星夜とデートの予定立ててるぞ」

來夢「ほんとだね……」

朔夜「星羅、夏休み満喫する気満々だな」

黒羽「……でも楽しそうだ」

豹牙「それはそうだけどよ」

豹牙は少しだけ唸る。

豹牙「俺たちも早く誘わねぇと、本当に予定なくなるぞ」

來夢「それは困る」

朔夜「……俺も考えておこう」

黒羽「俺も」

夜凪「…………」

夜凪は黙って星羅を見る。

星羅「星夜、どこから行く?」

星夜「まず買い物でいいんじゃない?」

星羅「うん!」

星羅は嬉しそうに笑う。

その笑顔を見ながら、月影のメンバーもそれぞれ考え始める。

――自分なら、星羅とどこへ行きたいだろう。

――二人きりなら、何をしたいだろう。

遥愛の予定は、今は返事待ち。

星夜との予定も決まっていく。

なら、自分たちも――。

星羅との夏休みを、少しずつ作っていけばいい。

星羅「ねぇ星夜、服も見たい!」

星夜「いいよ」

星羅「あとね――」

また楽しそうに話し始める星羅。

その声を聞きながら、豹牙が小さく呟いた。

豹牙「……夏休み、長ぇんだからな」

來夢「うん」

朔夜「まだまだこれからだ」

夜凪「…………」

誰も焦らずにはいられない。

けれど、星羅が楽しそうなら――。

その時間を、自分たちも少しずつ増やしていけばいい。

そんな夏休みの始まりだった。