月影に咲く、一輪の華

星羅「……ねぇ、朧」

朧「ん?」

星羅「今日、どこで寝るの?」

朧「奥の部屋」

星羅「へぇ……!」

星羅の目が輝く。

星羅「朱雀の拠点って、奥にも部屋あるんだ」

朧「いくつかある」

星羅「見てみたい!」

朧「……今?」

星羅「うん!」

朧「……分かった」

二人が立ち上がる。

その瞬間――。

豹牙「待て」

星羅「ん?」

豹牙「お前ら、どこ行くんだよ」

朧「部屋」

豹牙「…………」

來夢「豹牙、何でそんな顔してるの?」

豹牙「別に」

星羅「部屋見に行くだけだよ?」

豹牙「……ならいい」

そう言いながらも、明らかに気にしている。

星夜「豹牙、姉ちゃんのことになると分かりやすいな」

豹牙「うるせぇ!」

星羅「?」

朧「……行こう」

星羅「うん!」

二人が奥へ歩いていく。

瑛翔「……朧、完全に慣れたね」

刹那「星羅もな」

紅蓮「今日来てからずっとあいつの周りにいるな」

瑛翔「最初に抱きついた時は驚いたけどね」

刹那「俺にも抱きついてきたが」

瑛翔「それは刹那が固まってたやつね」

刹那「…………」

紅蓮「ははっ」

月影側では――。

來夢「……本当に仲良いんだね」

朔夜「俺たちが知らない間に、ここまで距離が縮まっていたとはな」

黒羽「……少し意外だった」

豹牙「…………」

夜凪「…………」

星夜だけが、そんな男たちを見て苦笑していた。

星夜「そんなに気にしなくても、姉ちゃんは姉ちゃんだろ」

來夢「分かってるけど……」

星夜「ならいいじゃん」

そして、少しだけ悪戯っぽく笑う。

星夜「でも――」

豹牙「?」

星夜「姉ちゃん、今日かなり楽しそうだから」

全員が黙る。

星夜「俺、ああいう姉ちゃん好きなんだよな」

黒羽「…………」

星夜「だから、今日くらいは好きにさせてやってよ」

その言葉に、誰も反論できなかった。

――その頃。

奥の部屋では。

星羅「わぁ……!」

朧「どう?」

星羅「すごくいい!」

小さな部屋。

窓際には簡素な机。

壁際には布団が用意されている。

星羅「ここで寝ていいの?」

朧「うん」

星羅「なんか嬉しい」

朧「……そんなに?」

星羅「うん」

星羅は部屋を見渡す。

星羅「朱雀に泊まるの、なんか不思議な感じ」

朧「……俺は嬉しいけど」

星羅「え?」

朧「また星羅とゆっくり話せるから」

星羅「…………」

今度は星羅が少し黙った。

朧「どうした?」

星羅「……ううん」

星羅は笑う。

星羅「私も嬉しい」

朧「……そっか」

二人の間に、静かな空気が流れる。

そしてその頃、部屋の外では――。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

夜凪「…………」

黒羽「…………」

全員が何となく奥の部屋を見ている。

瑛翔「……月影のみんな」

豹牙「何だよ」

瑛翔「もしかして、全員気になってる?」

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

瑛翔「……分かりやす」

紅蓮「ははっ」

そして――。

星夜「……姉ちゃん、人気者だな」

ぽつりと呟いた星夜だけが、どこか楽しそうに笑っていた。