この想いは、誰にも言えない ~深碧の音 つぼみ蕾のように~

 一人残された私は、手元に残ったスマホの画面た。

 そこには、いかにもデフォルトの自動返信ツールであろう、機械的で味気ない定型文のメッセージがぽつんと送られてきている。

 やっぱり、公式LINEだし、ただの業務連絡用だ。
 そう思いながらも、私は一言、自分の名前だけを画面に打ち込んで送信した。

『あんみです』 

それから、夕方の慌ただしい時間が過ぎていく。

 これから始まる居酒屋のバイトは、ピークタイムだし、スマホを見る余裕なんて1ミリもなくなる。

 出勤する直前、この場所を離れる前にもう一通だけ、迷った末にメッセージを送ってみた。

『また会えると嬉しいです』 

 返事が来るとも思っていないし、期待もしていない。
 なのに、画面が光った。

『あんみさん、少しだけど話せて嬉しかったです。
また会いましょうね!
CD聴いてくださいね』

 すぐに、レスポンスが来た。 

 無機質な自動返信じゃない。

 私の名前を呼んでて『また会いましょう』って。

 どっと心臓が熱くなるのを隠すように、私は、

『ありがとうございます』 
それだけ小さく打ってスマホを閉じ、鞄にスマホをしまった。

 胸の奥がじんわりと温かい。

 よし、と気合を入れ直して、私は軽やかな足取りで居酒屋へと出勤した。