「お母さん、おかえり。」
「おかえり、ママ!」
弟の緒登と夜ご飯を食べて、お風呂に入って歯を磨き、一緒にテレビを観てると、お母さんが帰って来た。
「ただいま。まだ、起きてたの?」
「うんっ!」
「あんまり夜更かししちゃだめよ。」
「今日はお母さんの顔を見てから寝るって、聞かなくて。」
私はリモコンでテレビを消した。
「ほら、寝に行くよ。」
「おやすみ!」
「はい。おやすみなさい。」
緒登と手を繋いで、寝室に向かった。
緒登の寝息が聞こえて来たので、起こさないように注意しながらベッドから出た。
リビングのドアを開けると、さっきまでのパンツスーツとは違い、ラフな部屋着に着替えたお母さんの姿。
「……お母さん。」
夜ご飯を温めて食べる姿に、呼び掛けた。
食べる手を止めて、私を見た。
「泉宮葵くんと別れたから。」
泉宮家は元を辿ると、武家の御家柄である。
爵位持ちの元特権階級だ。
皇族とも縁があるとかないとか……。
現在は銀行ホテル鉄道会社を経営する、創業者一族として知られる、正真正銘のお金持ちの家系。
葵くんは幼少の頃から、御家芸だと剣道を嗜み。
広い世界を見て来いと現当主に、海外の全寮制の学校に入れられたらしい。
彩ちゃん情報であった。
彩ちゃんはおじいちゃんが開業医で、お父さんもお医者さん。
二人のお兄さんは、大学の医学部に在籍中の医学生。
葵くんは海外でバスケを経験して、夏季球技大会では華麗なプレーを披露していた。
入夏家の家訓は質素倹約、贅沢は敵である。
代々土地を持つ地主で、地域の為に貢献して来た。
お金は持ち過ぎると不幸になる。
程々が丁度良い。
おじいちゃんは現役の議員で、地元選挙区で圧倒的な支持率を誇る。
地元の名士として知られた。
厳格な人だが、元教師で子供好き。
私は未だに苦手。
……顔が怖いから。



