桜が咲いたら、必ず君に会いにいく

「えっ、お前、清藍(せいらん)高校行ってんの!? めちゃくちゃ頭良いじゃねぇか!」
「そうかなぁ? 近いって理由で選んだだけだよ」
「憎い奴め。今夜、お前んちに化けて出てやる」
「えぇぇ、やめてよぉ……。ていうか、おうくん、まだ死んでないでしょ」
「それもそうか」

 話をしながら、オレ達は近くの公園に向かっていた。

「桜、まだ咲いてたんだね」
 
 ふと、足を止めて、ハルがつぶやく。

 見上げた先には、一本の桜の木が立っていた。

「ちょうど満開じゃないか。きっとオレ達に見られるのを待っていたんだろう」
「ふふっ、そうだといいな」

 木の幹に触れながら、ハルはそっと微笑んだ。

「昔、よくここで一緒に遊んだよな」
「うん。僕、楽しかったよ。どれだけ石を積み上げられるか、おうくんと勝負したり、葉っぱの上に寝転がったりしてさ」
「かくれんぼのつもりが、お前が寂しくなって、逆にオレを探しに来たこともあったな」
「あ、あれはっ! おうくんが、いつまで経っても見つけてくれないから!」

 ハルが顔を真っ赤にする。

 膨れた頬っぺたが、リスみたいで、思わず突っついてやりたくなった。

「紗雪ちゃん!」

 その名前が聞こえた瞬間、オレは弾かれたように振り返る。

「待たせちゃって、ごめんね」
「ううん、全然、大丈夫。それより生徒会のお仕事、今日もご苦労様です」
「ありがとう。でも、今日は新入生の歓迎会のことで、軽く打ち合わせしてきただけだから」

 み、美澄先輩!?
 なぜ、こんなところに!

「おい、ハル! ちょっと付き合え!」
「い、いきなりなにぃ!?」

 とっさにハルの手をつかんで、木の陰に隠れた。

 ん……? やけに柔らかいな。

 オレが想像していたより、ハルの手は小さく、骨格も細かった。
 
「ハル、お前……まさか、軟体動物じゃないだろうな?」
「ぼ、僕はれっきとした人間だよ!?」
「なら、日々の鍛錬不足か」
「た、鍛錬って、なんの……」
「答えるまでもない。お前は宴会の席で、オレに恥をかかせる気か?」

 ハルは、きょとんして首を傾げた。

 まったく困った幼馴染だ。
 こんなに軟弱な手では、りんごのひとつどころか、唐揚げにかけるレモンすら絞れんだろ。

後で、オレがたんまりと教育してやらねば。

「宴会の話はよくわからないけど……さっきの人、行っちゃったよ、おうくん」
「なんだとぉ!?」

 木の陰から顔を出し、公園の外の曲がり角をハルが指差す。 

 そこに美澄先輩の姿はなかった。一緒にいた友人らしき女子生徒もいなくなっている。

「果汁なんざ絞ってる場合じゃなかったぁ!」
「ど、どういうこと?」

 オレはハルに状況説明を一から試みた。