桜が咲いたら、必ず君に会いにいく

 * * *

「ハル、夏月(なつき)、聞いて! お母さん、新しいお仕事が見つかってね! ここより大きなお家に、引っ越すことになったの」

 幼い頃の僕らに、お母さんが言った。

 夏月は、お兄ちゃんの名前だ。

「本当!? よかったね、お母さん!」
「ありがとう、夏月。ハルも。二人が良い子でいてくれたおかげだよ」

 僕とお兄ちゃんの頭をなでながら、お母さんは温かく微笑んで、僕らをぎゅっと胸に抱きしめた。

「おもちゃもお洋服も、これからはもう我慢しなくていいからね」
「う、うん……」

 言えるわけなかった。

 本当は引っ越したくない。
 大好きなおうくんと、もっと遊んでいたい。

 たった一人できた僕の友達。
 離れ離れになるなんて嫌だった。

「今日の夕飯は、外で食べに行こっか」

 だけど、嬉しそうなお母さんを困らせたくなくて。
 僕は歪に作った笑顔で、うなずくことしかできなかった。

 その日の夜、布団に潜りこむと、僕は枕を胸に抱いて朝まで泣いた。

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