桜が咲いたら、必ず君に会いにいく

 そして、迎えたデート当日。

「おうくんが、寝坊してない……!?」

 待ち合わせ場所に現れたオレを見たとたん、ハルは目を白黒させた。
 
「昨日、ちゃんと寝た……? 寝不足だったりしない?」

 わりとガチめなトーンで、あれこれ心配される。

 と思ったら、ぐにゅっと顔を両手でサンドイッチされた。
 
 おい、こら。
 いくらオレが卵顔だからって、具材扱いするんじゃない。 

「お前はハムレタス……あ、いや、ポテサラか?」
「な、なんの話……?」
「今日の朝メシ」

 ハルの頭の上に浮かぶ特大ハテナを、オレは適当に水で流した。

 そういや、今朝は……何食ったっけ? 

 ヤベェ……極度のナーバス状態で、何も覚えてねぇぞ。

「あ、そうだ、焼き鮭!」

 オレが急に大声を出したからか、ハルの肩がビクンと跳ね上がった。

「めっちゃ和食じゃん……」

 ハルはため息をつき、ポケットからスマホを取り出す。

「先輩、いつ来るんだっけ?」
「三十分後だ」
「なら、僕はもう隠れてるよ」
「おう、わかった。頼んだぜ、相棒」

 激励のつもりで軽く肩を小突いてやると、ハルは「うわぁっ!?」と声を上げ、後ろによろけた。
 
 力量を見誤ったか……? 
 いや、でも、普段の三分の一くらいには抑えたはず。

 じゃあ、こいつが軽いのか。

「悪い。だが、ハル。カルシウムは、ちゃんととった方がいいぞ」
「さ、参考にしておくよ」

 ハルは苦笑いで、手を振った。

 パーカーに着させられたような背中が、駅の建物の中に消えていく。

 いっちょ後で、特売の牛乳を買い占めて、あいつの家に送りつけてやるとするか。