桜が咲いたら、必ず君に会いにいく

「やっぱり、身だしなみは大事だよな」

 トイレの鏡の前で、髪型を整える。

 身なりや服装は、その人の人生を変える重要なアイデンティティだと、どこぞやの偉そうなおっさんが言っていた。

「黒崎、お前、何やってんだよ」

 ネクタイを締め直していたら、そこへふらっと木下が現れた。

「完璧なサプライズだっただろ」
「ただの業務妨害だ。ロマンのひとかけらもない」

 コブラ顔負けの毒を散らしながら、木下は水道で手を洗い、ポケットからハンカチを取り出す。

「それ、オレにも貸してくんね?」
「嫌に決まってんだろ!」
「ケチケチ毒舌インテリメガネ野郎……」
「やかましいわぁっ!」

 木下の超音波攻撃に、オレは耳を塞いだ。
 やかましいのは、そっちだろ。

「待て待て待て! チャック、空いてるぞ」

 ズレたメガネをクイッと持ち上げて、木下がオレを呼び止める。

「おっと、これは失敬」
 
 ドアの前で立ち止まり、ズボンのチャックを閉めた。

 危ない危ない。

 後、少しで、オレの宇宙領域(アース・エリア)が、全人類に公開されるところだった。