君と手をつなぎたいけど

 母からは写真集を買ってくるようにとお使いも頼まれている。
 自分も先週行ったくせに、ポストカードと他のグッズに気を取られ、一番の目的だったはずの写真集を忘れたという、かなりうっかりな母だ。

「ふふっ、可愛いお母さん。私と好み合いそー」

 大河の話に、静良がふにゃんと笑う。

(やばい、可愛い)

 好きな子を母親に会わせるなんて御免だけど、彼女が喜ぶからつい色々話してしまう。

 ショッピングモールの混み具合から予想はしていたが、写真展もかなりの混雑ぶりだった。一応整然とした流れがあるから、そこそこゆっくり見られるけれど、うっかりすると人並みに飲まれそうな感じがする。

(手をつなぎたいけど……無理だよな)

 付き合ってるわけでもないのに突然そんなことをしたら、下手すりゃ痴漢扱いだ。できるわけがない。
 普段も無駄話できる仲ではあるし、こうして二人で出かけるのも嫌がられない程度には仲がいいと思うが、それでもまだ距離を測りかねている。

 意識してるのは自分だけなのか。
 時々目が合うのは偶然なのか。
 
(――偶然の可能性の方が高いんだけどな)

 大河の横には、たいてい川瀬順というモテ男がいる。幼稚園からの腐れ縁で親友でもあるが、女子の視線はほぼ間違いなく順に向けられていた。特別顔がいいとかではないが、目を引く男なのだ。
 普段なら嫌じゃない。俺の親友はかっこよかろ? と、自慢にさえ思っている。
 でも静良の視線が向けられているのだけは嫌で、そう思う自分が情けなくて嫌だった。

 でも今、順はいない。
 バチッと静良と目が合い、大河が曖昧に笑うと、彼女が少し困ったように眉を寄せた。