神崎さんはエロ過ぎる…!

次の日も、私は足取り重く、神崎さんの家へ向かった。

「…おはようございます。」

「おはようございます。
今日は、使ってない部屋の掃除を頼めますか?
まぁ、使っていないので、散らかってはいませんけど、埃などは気になるので。」

「分かりました。」

まともな仕事内容にホッとする。

私は雑巾とバケツを持って、一つ目の部屋を掃除した。

ここは、変なものは流石に無いだろう。
そして、本棚の埃を払って居た時、ばさりと原稿用紙の束が落ちてきた。

いけない、紙類は捨てちゃダメだから…!
私は束を元の位置に戻そうとする。

なんだか、日焼けもしてて、だいぶ古い原稿用紙のようだけど…?

「ひまわりの恋…?」

その題名を読むと、そう書いてあった。

おかしいな…
神崎さんの作品のタイトルだけ、Wikipediaで調べたけど…
こんなタイトルの本は無かった…

私は1行目から読んだ。

【ひまわりの恋…
僕は野原に小さな太陽のように輝くひまわりを見ると、彼女と出会った事を思い出す。
彼女は夏祭りに向日葵模様の浴衣で来ていた。
ふんわりと癖毛を活かしてまとめられた髪。
柔らかそうな髪に陽の光が降り注ぐ。
そして、キラキラと揺らめくクリスタルの髪飾り。

そのどれをも、鮮明に覚えている。】

そこから、夏祭りの描写に入り、下駄擦れした彼女を僕が助ける、という流れ。

そこから、告白、恋人同士、デートでの失敗談、初めての夜(性的な描写は無い)、サプライズ誕生日…
彼女と僕の思い出は募っていく。
面白くて読み耽っていたら、プロポーズのシーンになった。
しかし、そこで、筆は折られていた。

「???
なんなの、これ…?
まさか、神崎さんが書いた…?
それとも…?」

「小田さーん!
一つの部屋にどのくらい時間かけているんですか!?
日が暮れるまでやるつもりですかぁ!」

いつもの神崎さんの嫌味な声が聞こえた。

「はーい、今行きます!」

私は咄嗟にその原稿用紙をカーテンの隙間に隠した。

そして、何食わぬ顔でリビングに戻った。

「終わりましたよ。」

「では、第4の…」

「その前に!」

「何ですか?」

「聞きたい事があります。」

「だから、何?」

「神崎さんはどうして官能小説を書いているんですか?」

「べ、べ、別になんだっていいでしょう!?
一家政婦にすぎないあなたに何の関係があるんですか!?」

神崎さんは初めて少しムキになってそう言った。

「そうですが…
やっぱり、私…
お金でアシスタントをするの、辞めます…」

「え、なんでですか?
金額が少ないんですか!
じゃ、じゃあ、二万なら!?」

私は差し出された二万円をそっと差し戻し、静かに首を横に振った。

それは、初めて、神崎さんの事を真剣に考えたからかもしれない。