「弟の緒登。ほら、お客様にご挨拶は?」
「……こんにちは。」
「こんにちは。お邪魔してます。泉宮葵と申します。」
緒登はまだ小学生で、歳の離れてる弟。
私がお母さんと緒登、家族三人で暮らすマンションに、葵くんが遊びに来た。
「さぁ、紅茶が入りましたよ。お口に合うと良いのだけれど。」
リビングには紅茶と、お母さんが焼いたクッキーの甘い香りがした。
「とても美味しい。お菓子作り、お上手なんですね。」
葵くんはカップを持ち一口飲んでから、クッキーに手を伸ばして食べた。
「お上手、だなんて。ありがとうございます。」
私はオレンジジュースを飲む緒登が、ジュースを溢さないかと注意しながら、クッキーを数枚取ってあげた。
「美味しい?」
「うんっ!」
「そんなに急いで食べなくても、まだ沢山あるんだから。」
口の横に付いてる、クッキーの屑を払った。
「娘はご覧の通り、弟の面倒を甲斐甲斐しく見ます。近い将来、良い母親になると思いませんか?」
「えぇ。そうですね。」
……やめてくれ。
お母さん。
私はまだ、キスもしてませんよ。
清い体ですから。
とは言えず、乾いた笑みを漏らした。



