放課後。
日直の仕事を終えて教室へ戻ると、クラスの男子がわたしの机の前に立っていた。
「七瀬さん、明日の提出物ってここで合ってる?」
「あ、うん。たしかこの用紙だよ」
わたしがファイルを取り出して見せると、その子は安心したように笑う。
「助かった。七瀬さんってほんと優しいよね」
「そんなことないよ」
困っているなら助けたい。
ただそれだけで答えただけなのに。
「結愛、帰るよ」
背後から聞こえた声に、わたしはびくっとした。
振り返らなくてもわかる。
この少し低くて、落ち着いた声は咲也だ。
「もう少しかかるかも」
「かからないでしょ」
そう言って、咲也はわたしの机の横に立つ。
にこやかな顔。だけど、空気が少し冷たい。
「その書類なら、先生がさっき職員室に持っていったよ」
「え、そうなの?」
「うん。だから終わり」
男子は気まずそうに頭をかいた。
「ごめん、引き止めちゃった」
「大丈夫」
答えようとしたわたしより先に、咲也が口を開く。
「結愛、やさしいから誰の相手もしちゃうんだよね」
笑っているのに、その声には妙な圧があった。
「でも、あんまり遅くまで付き合わせないで」
「あ……うん」
男子が去っていくと、わたしはすぐに咲也を見た。
「今の言い方、ちょっと冷たくなかった?」
「そう?」
「そうだよ」
「だって事実だし」
「え?」
咲也はわたしの鞄を持ち上げると、そのまま教室の出口へ向かう。
わたしが慌てて追いかけると、廊下に出たところで足を止めた。
「結愛は、近すぎるんだよ」
「なにが?」
「みんなに」
真正面から見つめられて、息が止まる。
「簡単に笑って、簡単にやさしくして、期待させる」
「期待なんてさせてないよ」
「させてるよ。少なくとも俺は嫌なくらい見てる」
その声音は静かなのに、胸がぎゅっとなる。
「咲也……?」
「俺以外に、あんなふうにしないで」
独占欲。
その言葉が、頭の中にふっと浮かんだ。
でも、幼なじみ相手にそんなこと思うのは変な気がして、すぐに打ち消す。
だって咲也は、ただ昔から世話焼きなだけ。
わたしを放っておけないだけ。
そう思いたかった。
日直の仕事を終えて教室へ戻ると、クラスの男子がわたしの机の前に立っていた。
「七瀬さん、明日の提出物ってここで合ってる?」
「あ、うん。たしかこの用紙だよ」
わたしがファイルを取り出して見せると、その子は安心したように笑う。
「助かった。七瀬さんってほんと優しいよね」
「そんなことないよ」
困っているなら助けたい。
ただそれだけで答えただけなのに。
「結愛、帰るよ」
背後から聞こえた声に、わたしはびくっとした。
振り返らなくてもわかる。
この少し低くて、落ち着いた声は咲也だ。
「もう少しかかるかも」
「かからないでしょ」
そう言って、咲也はわたしの机の横に立つ。
にこやかな顔。だけど、空気が少し冷たい。
「その書類なら、先生がさっき職員室に持っていったよ」
「え、そうなの?」
「うん。だから終わり」
男子は気まずそうに頭をかいた。
「ごめん、引き止めちゃった」
「大丈夫」
答えようとしたわたしより先に、咲也が口を開く。
「結愛、やさしいから誰の相手もしちゃうんだよね」
笑っているのに、その声には妙な圧があった。
「でも、あんまり遅くまで付き合わせないで」
「あ……うん」
男子が去っていくと、わたしはすぐに咲也を見た。
「今の言い方、ちょっと冷たくなかった?」
「そう?」
「そうだよ」
「だって事実だし」
「え?」
咲也はわたしの鞄を持ち上げると、そのまま教室の出口へ向かう。
わたしが慌てて追いかけると、廊下に出たところで足を止めた。
「結愛は、近すぎるんだよ」
「なにが?」
「みんなに」
真正面から見つめられて、息が止まる。
「簡単に笑って、簡単にやさしくして、期待させる」
「期待なんてさせてないよ」
「させてるよ。少なくとも俺は嫌なくらい見てる」
その声音は静かなのに、胸がぎゅっとなる。
「咲也……?」
「俺以外に、あんなふうにしないで」
独占欲。
その言葉が、頭の中にふっと浮かんだ。
でも、幼なじみ相手にそんなこと思うのは変な気がして、すぐに打ち消す。
だって咲也は、ただ昔から世話焼きなだけ。
わたしを放っておけないだけ。
そう思いたかった。



