「神谷くん、おはよう」
「おはよー、咲也くん」
教室に入ってきた女子たちが次々に声をかける。
咲也はいつも通り、やわらかく笑ってそれに返した。
「おはよう」
それだけ。
十分優しい声なのに、わたしに向けるときとはどこか違う。
「神谷くんって、ほんと誰にでも優しいよね」
隣の席の友だちが小さくささやいた。
わたしは曖昧に笑う。
そう。咲也は人気者だ。
女子にも男子にも好かれていて、廊下を歩けば自然と視線が集まる。
だけど、幼なじみのわたしは知っている。
本当に優しい顔をするのは、たぶん、わたしにだけだ。
「結愛」
「なに?」
「これ」
机の上に置かれたのは、いちごミルク。
わたしが昨日、購買で買えなかったとぼやいていたやつ。
「え、覚えてたの?」
「結愛のことは覚えてるよ、なんでも」
さらっと言われて、思わず黙りこむ。
こういうところが心臓に悪い。
友だちがにやにやしながらわたしたちを見ていた。
「七瀬さん、神谷くんに甘やかされすぎじゃない?」
「そ、そんなことないよ」
「あるよ」
答えたのは、なぜかわたしじゃなく咲也だった。
しかも、平然と。
「結愛は放っておくとすぐ無理するから」
「え」
「だから俺が見てる」
教室が一瞬しんとする。
そのあと、きゃっと女子たちの小さなざわめきが広がった。
わたしだけが、顔を熱くして固まってしまう。
「咲也、そういう言い方やめてよ」
「なんで」
「なんか誤解されそう」
「誤解じゃないけど」
にこっと笑ったその顔は、完璧に王子様なのに。
言ってることは全然やさしくない。
「おはよー、咲也くん」
教室に入ってきた女子たちが次々に声をかける。
咲也はいつも通り、やわらかく笑ってそれに返した。
「おはよう」
それだけ。
十分優しい声なのに、わたしに向けるときとはどこか違う。
「神谷くんって、ほんと誰にでも優しいよね」
隣の席の友だちが小さくささやいた。
わたしは曖昧に笑う。
そう。咲也は人気者だ。
女子にも男子にも好かれていて、廊下を歩けば自然と視線が集まる。
だけど、幼なじみのわたしは知っている。
本当に優しい顔をするのは、たぶん、わたしにだけだ。
「結愛」
「なに?」
「これ」
机の上に置かれたのは、いちごミルク。
わたしが昨日、購買で買えなかったとぼやいていたやつ。
「え、覚えてたの?」
「結愛のことは覚えてるよ、なんでも」
さらっと言われて、思わず黙りこむ。
こういうところが心臓に悪い。
友だちがにやにやしながらわたしたちを見ていた。
「七瀬さん、神谷くんに甘やかされすぎじゃない?」
「そ、そんなことないよ」
「あるよ」
答えたのは、なぜかわたしじゃなく咲也だった。
しかも、平然と。
「結愛は放っておくとすぐ無理するから」
「え」
「だから俺が見てる」
教室が一瞬しんとする。
そのあと、きゃっと女子たちの小さなざわめきが広がった。
わたしだけが、顔を熱くして固まってしまう。
「咲也、そういう言い方やめてよ」
「なんで」
「なんか誤解されそう」
「誤解じゃないけど」
にこっと笑ったその顔は、完璧に王子様なのに。
言ってることは全然やさしくない。



