幼なじみからの独占愛に、もう逃げられない

わたしの幼なじみは、昔からずるい。

 だって、どんなときでも一番かっこいい顔をしているのに。
 そのくせ、わたしの前でだけ、少しだけ意地悪で、ひどく甘い顔をするから。

「結愛、また無理してる」

 朝のホームルーム前。
 教室に入るなりそう言われて、わたしはびくっと肩を揺らした。

「え、してないよ」

「してる。顔見ればわかる」

 机に鞄を置く前に、ひょいとわたしの手から荷物が取り上げられる。
 顔を上げると、目の前には神谷咲也。

 同じ高校二年生。
 学園中で知らない人なんていないくらい有名な人気者で、勉強も運動もできる完璧王子。整った顔に、余裕のある笑み。誰にでも爽やかで、先生受けもいい。女子から毎日のように名前を呼ばれても、特別浮かれることなく軽く受け流す。そんな人。

 なのに。

「昨日も遅くまで起きてたでしょ」

「なんでわかるの」

「幼なじみなめないで」

 そう言って、咲也は当たり前みたいにわたしの前髪を指先で整えた。
 ほんの少し触れられただけなのに、心臓が変に跳ねる。

「……近いよ」

「今さら?」

 くすっと笑うその顔が、朝の光に照らされてまぶしい。
 やっぱりこの人はずるい。

 昔からずっと隣にいるせいで、こういう距離に慣れてしまっている自分がいちばん困る。