「咲也、ちょっと」
「結愛は無防備すぎる」
踊り場の壁際に追い込まれるみたいな形になって、わたしはどきどきしながら見上げた。
咲也の顔は近い。
真剣で、きれいで、少し怒っていて、それでもどうしようもなく甘い。
「誰にでもあんなふうに笑わないで」
「普通に話してただけだよ」
「それがだめ」
「だめって……」
「俺が嫌だ」
まっすぐ言い切られて、息が詰まる。
咲也はわたしの頬に触れ、熱を確かめるみたいに親指でそっとなぞった。
「結愛にだけは、余裕あるふりしたくてもできない」
「……」
「他のやつに向ける笑顔見るたび、全部俺だけのものにしたくなる」
心臓がうるさい。
こんな近くで、こんな声で、こんなことを言われたら、鈍いわたしでも意識しないほうが無理だ。
「ねえ、結愛」
「なに……」
「少しは俺のこと、男として見て」
その言葉が、胸の奥にまっすぐ落ちていく。
幼なじみ。
ずっとそう思っていたはずなのに。
今目の前にいる咲也は、そんなやさしい枠の中には全然おさまってくれない。
「ちゃんと意識して。期待させて。じゃないと、ほんとにもう我慢できない」
「咲也、そんなこと言われたら……」
「困る?」
少しだけ不安そうに揺れた目に、胸がきゅっとした。
完璧王子なのに。
みんなの前ではあんなに余裕があるのに。
わたし相手だと、こんな顔をする。
それが、たまらなくずるい。
「……困る、けど」
「けど?」
「ちょっと、うれしい」
そう言った瞬間、咲也が目を見開いた。
次の瞬間には、ぎゅっと抱きしめられていた。
「っ、さ、咲也」
「それ反則」
耳元で落ちた声が、ひどく甘い。
「そんなこと言われたら、もう絶対離せない」
背中に回された腕に力がこもる。
苦しいわけじゃない。むしろ守られているみたいで、胸が熱くなる。
「結愛」
「うん」
「これからもっと甘やかすし、もっと独占する」
「宣言なの、それ」
「うん。逃げ道なくす宣言」
くすっと笑ってしまうと、咲也は少しだけ体を離してわたしを見つめた。
「笑った」
「だって、言い方がずるいんだもん」
「ずるくてもいいよ。結愛が俺を見るなら」
そう言って、咲也はわたしのおでこにこつんと額を寄せた。
「早く慣れて」
「なにに」
「俺が結愛に甘いのも、独占したがるのも、全部」
近すぎる距離で囁かれて、また顔が熱くなる。
「そのうち、もっとすごいこと言うから」
「えっ」
「今のうちにどきどきしといて」
もう十分どきどきしてるのに。
これ以上なんて、耐えられる気がしない。
だけど。
咲也の腕の中は、悔しいくらい安心する。
独占欲が強いのに、触れ方はやさしくて、声は甘くて。
逃げられないと思うのに、逃げたくないとも思ってしまう。
たぶんもう、少しずつはじまっている。
幼なじみだったはずのこの関係が、もっと特別に変わっていく瞬間が。
そしてわたしは、まだ知らない。
このあと咲也の独占欲が、もっと大きく動き出す出来事が待っていることを。
「結愛は無防備すぎる」
踊り場の壁際に追い込まれるみたいな形になって、わたしはどきどきしながら見上げた。
咲也の顔は近い。
真剣で、きれいで、少し怒っていて、それでもどうしようもなく甘い。
「誰にでもあんなふうに笑わないで」
「普通に話してただけだよ」
「それがだめ」
「だめって……」
「俺が嫌だ」
まっすぐ言い切られて、息が詰まる。
咲也はわたしの頬に触れ、熱を確かめるみたいに親指でそっとなぞった。
「結愛にだけは、余裕あるふりしたくてもできない」
「……」
「他のやつに向ける笑顔見るたび、全部俺だけのものにしたくなる」
心臓がうるさい。
こんな近くで、こんな声で、こんなことを言われたら、鈍いわたしでも意識しないほうが無理だ。
「ねえ、結愛」
「なに……」
「少しは俺のこと、男として見て」
その言葉が、胸の奥にまっすぐ落ちていく。
幼なじみ。
ずっとそう思っていたはずなのに。
今目の前にいる咲也は、そんなやさしい枠の中には全然おさまってくれない。
「ちゃんと意識して。期待させて。じゃないと、ほんとにもう我慢できない」
「咲也、そんなこと言われたら……」
「困る?」
少しだけ不安そうに揺れた目に、胸がきゅっとした。
完璧王子なのに。
みんなの前ではあんなに余裕があるのに。
わたし相手だと、こんな顔をする。
それが、たまらなくずるい。
「……困る、けど」
「けど?」
「ちょっと、うれしい」
そう言った瞬間、咲也が目を見開いた。
次の瞬間には、ぎゅっと抱きしめられていた。
「っ、さ、咲也」
「それ反則」
耳元で落ちた声が、ひどく甘い。
「そんなこと言われたら、もう絶対離せない」
背中に回された腕に力がこもる。
苦しいわけじゃない。むしろ守られているみたいで、胸が熱くなる。
「結愛」
「うん」
「これからもっと甘やかすし、もっと独占する」
「宣言なの、それ」
「うん。逃げ道なくす宣言」
くすっと笑ってしまうと、咲也は少しだけ体を離してわたしを見つめた。
「笑った」
「だって、言い方がずるいんだもん」
「ずるくてもいいよ。結愛が俺を見るなら」
そう言って、咲也はわたしのおでこにこつんと額を寄せた。
「早く慣れて」
「なにに」
「俺が結愛に甘いのも、独占したがるのも、全部」
近すぎる距離で囁かれて、また顔が熱くなる。
「そのうち、もっとすごいこと言うから」
「えっ」
「今のうちにどきどきしといて」
もう十分どきどきしてるのに。
これ以上なんて、耐えられる気がしない。
だけど。
咲也の腕の中は、悔しいくらい安心する。
独占欲が強いのに、触れ方はやさしくて、声は甘くて。
逃げられないと思うのに、逃げたくないとも思ってしまう。
たぶんもう、少しずつはじまっている。
幼なじみだったはずのこの関係が、もっと特別に変わっていく瞬間が。
そしてわたしは、まだ知らない。
このあと咲也の独占欲が、もっと大きく動き出す出来事が待っていることを。



