練習が終わると、私たち一年女子三人は、決まって体育館脇の自動販売機へ向かった。
いや、正確には。
美咲は普通に歩いていた。
麗子は少し疲れていた。
そして私は、よたよたとついていった。
美咲はいつものように余裕の笑顔で、自販機にコインを入れる。
「美咲……わたしのも買って……」
「何飲む?」
「なんでもいい……冷たいやつ……」
私はベンチに座り込んだ。
ドリンクを飲む手すら重い。
麗子も隣に座ると、さっそく美咲と作戦会議を始めた。
「ねえ。どうしたら、あの練習を少しでも楽に乗り越えられると思う?」
「声出すと疲れるよね」
「そうなの。だから、自分が数えるとき以外は口パクでいこう」
「なるほど」
「あと、腕立て伏せ」
麗子が声をひそめた。
「おなかを地面につけて、やってるように見せる」
「それ、ばれない?」
「ばれないようにやるの」
真剣だった。
私はジュースを飲みながら、力なくうなずいた。
すると麗子が言った。
「ねえ」
「なに?」
「航平先輩の足が折れたら、練習休みになるかな」
美咲は即答した。
「ならないと思う」
「なんで?」
「足折れてても、椅子に座って指示出しそう」
「……ありえる」
私たちは沈黙した。
恐ろしい想像だった。
「じゃあ、どうしたら練習休みになるの?」
三人で本気で考えた。
そして私は、ひらめいた。
「航平先輩がレポート出し忘れて、教授に呼び出される」
麗子がぱっと顔を上げる。
「それだ!」
美咲もうなずいた。
「それなら練習来られない」
三人で手を合わせた。
「航平先輩が、教授に呼び出されますように」
「レポートを出し忘れていますように」
「できれば月水金に」
そこまで祈った、そのときだった。



