魔法がなくても


なんともあっけない。
手のひらの力を消して、私は編入生のもとへと近づいた。


「君、大丈夫?」

「だ、大丈夫です。ありがとうございました……」


ぺたん、と編入生は安心したのか座り込んでしまう。


「私は星羅。あなたは?」

「……編入生の紫翠宙(しすいそら)、です」


ちょこんとサイドに結ばれた暗い紺色の髪に、緑色の瞳の男の子。

逃げ回っていたせいか、制服には葉っぱや砂がついていた。

おーさんには後から報告するとして、疲れ果てている編入生くんを助けたからとこのまま置いていくのも気が引けるような……。


「えっと……寮まで送るよ。立てる?」


手を差し伸べて、すぐにわたしの手をとるも編入生くんは『あー……』と気まずそうに目を泳がせた。


「それが、その……寮に入れてなくて」



え──?

予想外、ではいけれど寮に入れていないなら、どこで過ごしてるの?