「……なんか、自信なくなってくるなぁ……」
ぼそ、と口の中で転がしたはずの音。
なのに犬井駆はすくいあげる。
「みのりんはかわいいよ」
「っ、」
その声色がやけにクリアで。
いつもの伸びた感じじゃなくて。
思わず見上げるとふわりと優しい微笑みをくれた彼はぽんぽん、と私の頭を叩く。
その笑顔くらい優しいてのひら。
「また放課後ね」
と言い残してゆらりと立ち上がって、元いた自分のグループへ戻っていった。
とくん、と心臓が揺れた気がした。
………………え。
いやいや気のせい気のせい。
チャラ男相手に何ときめいてんのよ。
彼にとってはただ挨拶代わりのスキンシップであって特別な意味はないのに。
それに私のこころには蜂技くんという美しき白馬の王子様がいるってのに。
「……調子狂うわ……」
恐るべし犬井駆。
無表情でクールな蜂技くんとは対照的、千変万化な表情が人の心をもかき乱してゆく。
初めてあんなに優しい表情を見たけど、きっと犬井駆はみんなにもそうやって乙女心を射止めているんだろうな。
わざとなのか、無意識なのか。
それはまだ、私にはわからなかった。



