負けじと彼は待ってよーと私の手首をつかもうとするから、私はそれを振り払ってキッとにらみながら言う。
「他の子さわった手で私に触れないで!」
そしたら動きは止まって、その隙に離れて自分の席につく。
気安く女子の前髪さわってへらへら笑いやがって。
誰とでも仲良くお話できるのは犬井駆の良いところだと思うけど。
あんなに親しげなやり取りしてムカつく。
あの子もあの子で堂々と男子相手に前髪チェックなんてしちゃって図太い神経だこと。
他の女の子に触れるのやめてほしいのにそれを伝えるのはすごくむずかしい。
重たい女って思われるのもイヤだ。
うまく伝えられなくて結局さっきみたいに八つ当たりするのもよくないのはわかってるのに。
「みのりん……今すっごい恐ろしいオーラが出てるよぉ……」
カナミは困り眉でそう言ってポンポンと優しく肩をたたいてくれる。
するとチャイムが鳴って授業が始まった。
リコーダーの練習中、ピッピッピッピッとメトロノームにあわせて淡々とタンキング。
ぼーっと前の席の椅子の背もたれ裏に貼られているシールを眺める。
一定のリズミカルな音がお経みたいで頭の中に余計な考え事が湧き上がってくる。



