おそるおそる振り返ると、しゃがみこんで手を差し出して、まっすぐ私をみつめて。
「お手」
「……っ、」
何かにすがりたくてつい手をとってしまった。
ぐいっと引っぱられて立ち上がり、犬井駆は真剣な顔で。
「ぼくたち付き合います!」
つないだ手をかかげて宣言した。
言葉に詰まるのどの奥からかろうじて出せるのはせいぜい3文字がいいところ。
「………………ダサい」
すっごくダサいよ、うん。
ロマンの欠片もない、へたっぴな発言なのに。
それなのに、いいなって思った。
笑ってごまかしてない、着かざってないのに。
それなのに、となりに立つきみはかっこよくて。
透きとおった瞳が果てしなくきれいで、信じなきゃ、よりも信じたい、と感じた。
「ダッサい、けど、好きだと、思う……」
ぎゅっと強く握り返す。
そうしないと羞恥心にやられて力が抜けて崩れ落ちそうだから。
「……」
「……」
じっと見つめ合っていたら観客席からくすくすくすっと笑い声が聞こえてハッと我に返る。
「っ……うう、やだ、むり、帰るっ……」



