というか聞き捨てならないワードが脳裏にいくつかピックアップされる。
大人の女の人?デート?犬井ファン?同い年には興味ない?
なんだそのうわさ。初耳。
それと犬井ファンって何。犬井駆にファンクラブあんの?なにそれ。
もっと詳細を聴きたかったけどトイレの水を流したあとからはすでに別の話題になっていた。
ぼうっと白い便器のふたを見つめる。
そこになぜか犬井駆がきれいな女の人と腕を組んで歩いているシーンが浮かび上がる。
「っ……」
いやだな。
ぎゅうっと心臓をにぎりしめられたような感覚がした。
あわてて首を振ってかき消す。
…………ん?
“いやだな”?
なにが?
再びうっすら犬井駆の顔が浮かぶ。
胸がトクン、ひとつ高鳴る。
ガチャッ!
強くカギを開け個室から飛び出しバシャバシャと手を洗う。
ありえない。ないないないない、絶対にない!
あんなチャラ男にときめくなんてありえないから!
ゴシゴシしまくって泡だらけになった手を冷たい流水にあてて一時の気の迷いも水に流す。
顔を上げるといつも通りの自分が鏡にうつる。
うん、平常心。



