愛してると裏切った、君の嘘。

ブッブー、ブッブー。

ポケットの中で、スマホが大きく鳴り響いた。

学校の中じゃなかったのが幸いだ。

私は通話ボタンをポチッと押し、「もしもし」と相手を確かめる。

「あー、弓月ちゃぁん!」

大声を発した柚森希和。

「うっ、どーしたの?嫌なことでもあった?」

希和は繊細で、人の言動が気になりすぎる性格なのだ。もし何かあったらどうしよう……っ。

「うわぁ弓月ちゃん優しいよぉ……。実はね、あのね!」

え?悩み事でもあるのかと思ってたけれど、違うみたい。真逆で、何だか嬉しそうな様子。

「アタシ、彼氏できたんだよねっ♪」

か、彼氏!?

元々希和は可愛くておっとりしている性格だから、告白されそうなのは感じていたけれど、まさかその日が今日だなんて!

私は親友の彼氏デビューに、自分ごとの様に喜んだ。

「ふふっ、彼氏できたんだね。流石、希和だよ」

「……ありがとね」

褒めたのに、なぜだか希和は浮かない返事をした。

「どうしたの?恋人できて、嬉しいんじゃないの?」

私が問うと、希和ははぁっとため息を小さくつき、言った。

「弓月ちゃんだって、性格も良いし心配性なのに、どうして恋人できないんだろう」

そこ。しかも、その『心配性』って……。

「私は男子好きって程でもないし……、特に好きな人もいないかな」

「ふうん、そうなんだ。じゃあね」

希和は短くさよならをしてプチッと電話を切ってしまった。

さっきの電話、何だったんだろうな。

ただ、私に好きな人がいるか聞きたかっただけ?




……さっきの、私の言葉、「特に好きな人もいないかな」って、大嘘。

希和に嘘を吐いてしまったのは申し訳ないけれど、やっぱり……“あの人”が片想いの相手だということは言えない。

あの人、とは、安齋悠。

悠とは保育園からの付き合いで、いろんな顔をたくさん見てきた。


保育園で、すやすや眠っている時の横顔。

給食で、友達にデザートを取られて悔しくて怒ってる顔。

小学校の運動会の競技、確かリレーだったかな、1位になれて晴々とした顔。

委員会でハキハキと発言しているかっこいい顔。


悠に会いたい。

学校でも、私を幼なじみとしかみていない様子。


メールを送って良いのかな。

電話、かけちゃって良いのかな。

そんな想いが胸のあたりにぐつぐつと湧き上がってきた。


と言っても……一方的に私が好きなだけで、悠が私を気にしている確率は0パーセントに限りなく近い。


私には振り向かせる強さなんてない。

そんなの、分かってるのに、まだまだ悠を追いかけ続けようとする諦め悪い私が嫌。