隣の席の泉宮くん(過去形)



文化祭当日。

「……チョコバナナとあんこきな粉下さい。」

「チョコバナナとあんこきな粉、ですね。二つ合わせて八百円になります。」

泉宮くんに注文して、お金を払う時、指先が触れそうになり、心臓がバクバクした。

苺は原価率が高いと涼風先生に却下されて、缶詰のフルーツになった。


「午前中、何処回ったの?」

クレープが出来るのを待ってる間、泉宮くんに聞かれた。

「お化け屋敷と謎解きイベントに行ったよ。」

二年生の先輩がやってる、お化け屋敷と謎解きイベントに彩ちゃんと参加した。

お昼時になり、私はクラスにクレープを買いに来て、彩ちゃんは三年生がやってる、たこ焼きを買いに行った。

買った物を食べられる場所が、一階にあるからそこで落ち合う約束をした。


泉宮くんに手を振られ、教室を後にした。

イケメンな売り子がいると、噂になってるのか繁盛していた。

都鳥くんはサッカー部の出し物に行っていた。

何をやるのか聞いてみたら、サッカーボーリングだと。

ボーリングのピンを、ボールを蹴って倒す遊びらしい。


「何してるんですか。」

低い声が出た。

一階に降りて彩ちゃんの姿を探してると、数人の男達に絡まれてる彩ちゃんを見つけた。

「……真緒、」

彩ちゃんは私の顔を見ると、ホッとした表情を浮かべた。

服装からして他校の生徒。

「は?何、お友達?」

彩ちゃんの顔を無遠慮に覗き込んで、体に触ろうとする男に頭に血が上る。

「やめて下さい。彼女が迷惑してるの分からないんですか。」

「お前に用はねぇんだよ。」

両手がクレープで塞がってるので、「邪魔すんな!」と、肩を押されてバランスを崩して転びそうになるが、寸前のところで体を支えられた。

「女の子に注意を受けて逆ギレするのは、如何なものかと思いますよ。」

……風紀委員の先輩、だろうか。


「周りも迷惑してますし。お引き取り願えますか?」

「あ?」

「それとも、本部までご足労頂けますか?保護者の方にご連絡して、迎えに来て頂きましょうよ。」

周囲の人の注目を浴びてる。

舌打ちをすると、男達は逃げる様に去って行った。


「お怪我は有りませんか?」

「……大丈夫です。」

彩ちゃんは泣きそうな声で答えた。

「ああいう輩に絡まれた時は、大きな声ではっきりとNOを主張して下さい。恐怖から声が出ない場合が有りますが、自分の身を守る為です。貴女も勇敢だとは思いますが、無謀では?」

「すみません……。」

怒られた。


周囲の人の囁きから、やっぱり風紀委員の先輩だと分かった。腕にマークつけてるし。


「食べよっか。お腹空いたね。」

「……うん。ごめんね、真緒。」

気を取り直して言ったが、彩ちゃんの気分は沈んだまま。

彩ちゃんを一人にするんじゃなかった。


マジ、死罪。


「変な奴に絡まれたって、聞いたよ。」

泉宮くんが心配そうにやって来た。

文化祭が終わり、教室に戻ると噂になっていた。

彩ちゃんは可愛いと有名だし、風紀委員の先輩も有名人ぽかった。


「……彼女の笑顔を奪った奴等を許す事は、決して出来ません。」

「何キャラ……?ほんと気を付けてよ。危ないんだから。桜森さんは?」

「保健室で休んでる。」

「そっか。お大事にね。」